子どもたちの食の貧困が叫ばれて久しいが、足立区では区長の公約で7年前にスタートした給食改革が成功し、区のマイナスイメージを変えるまでになりつつある現場ではどんな苦労があったのか。その取り組みを追った。

同じ条件でなぜ味が違うのか

グラフを拡大
年間残菜率が半減

給食が、区を変えようとしている。

2007年からスタートした東京都足立区の「おいしい給食」事業。外食や中食など、味の濃い料理や添加物の多い食事に慣れている現代の子どもたちに対し、天然だしを使い素材の旨味を活かした給食を提供し、身体に必要な栄養知識などを教える。そして給食の食べ残しゼロを目指す施策だ。

区の調査では、給食時間を楽しいと感じている小学生は08年度の89%から10年度には97%に、中学生で79%から82%に増加した。給食の食べ残し(以下、残菜率)は08年度で小学生は9%あったが13年度に3.7%まで減り、中学校でも14%から7.7%に改善している。

足立区長 近藤やよい

近藤やよい足立区長がマニフェストの一つに「おいしい給食」を掲げて就任したのは07年。

「きっかけは2つあります。一つは、都議時代に生ごみの堆肥化を進めようとしたとき、東京都の生ごみの最たるものが給食の残菜だったことを知りました。食べてはじめて栄養になるものですから、食べ残せばどんなに栄養の優れたものでもごみになってしまいます。もう一つは、あるご家庭が区内で転校したところ、転校先の学校給食が美味しくなく、お子さんが食べ残すようになった、という話を聞いたことです」

足立区は各学校で給食を作る「自校調理」だが、同じ予算、同じ条件で作っているのだから、味にそれほどの違いはないはずと近藤区長は思った。だが調査を始めてみると食べ残しがゼロに近い学校もあれば、3割を超える学校もある。「その原因を把握し、味の差をなくすことが第一歩でした」。