時事通信フォト=写真

ブラジル大統領 ジルマ・ルセフ
1947年まれ。リオグランデドスル連邦大学経済学部卒業。ポルトアレグレ市財務局長、リオグランデドスル州鉱山・エネルギー・通信長官、鉱山・エネルギー大臣、大統領府文官長などを経て、2011年より現職。


ベスト8が決定したFIFAワールドカップで、ブラジル代表チームが地元初優勝を飾るかどうかが注目されている。単にサッカー王者を決めるだけではない。ジルマ・ルセフ大統領が10月の大統領選の再選をへて続投できるかどうか、つまりブラジルの未来を占う大会でもある。

「私はブラジル国民の母となる」。2011年、そう言って鳴り物入りで登場したブラジル初の女性大統領は今や崖っぷちだ。かつて軍事政権下で左翼ゲリラとして戦闘し、投獄されて拷問に耐えた経験もある「鉄の女」。ルラ前政権下では、鉱山・エネルギー相、文官長を務めたエコノミストであり熟練政治家だが、政権を引き継ぐと、新興国として急成長中だったブラジル経済をめぐる環境は急激に悪化。彼女の型破りな国有企業介入や強引な利下げ政策はことごとく失敗し、経済成長の減速、インフレ悪化、経常収支赤字の増大を招いた。第2期ルラ政権の「経済成長加速計画」(PAC)推進役として「PACの母」との呼び名もあったが、インフラ整備計画は見直しを余儀なくされた。

貧富の格差是正策にはそれなりに取り組んだが、「福祉に優先して法外な投資をつぎ込んだスタジアム」への反発は、反W杯抗議デモの暴徒化という形で彼女の喉元に突き付けられている。このうえ、W杯でブラジルが途中敗退にでもなれば、それはルセフ氏へのレッドカードを意味するだろう。

投資家たちはいっそ政権交代のほうが経済に好影響と期待をよせる。労働者党内ではルセフ氏の代わりにルラ前大統領の再出馬を推す声も。だが16年リオデジャネイロ五輪目前での「選手交代」が吉と出るか。この国では崖っぷちの大統領の命運もサッカーの神様に委ねられている。

(時事通信フォト=写真)
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