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東レ会長・経団連会長 榊原定征(さかきばら・さだゆき)
1943年、横須賀市生まれ。67年名古屋大学大学院修了後、東洋レーヨン(現東レ)入社。2002年社長、10年会長。


6月3日開催の定時総会を経て「財界の総本山」経団連の第13代目会長に正式に就任した。1946年に経団連が発足以来、繊維業界の代表が会長ポストに就くのは初めて。しかも、榊原氏は2007年から11年までの4年間経団連副会長を歴任した“財界OB”。「財界総理」とも呼ばれる経団連会長は現役の副会長から登用するケースがほとんどで、OBからの就任は極めて異例。榊原氏自身も、内定後の記者会見では戸惑いながら「まさに身の引き締まる思いであり、使命を天命と受け止め、日本経済の再生に取り組みたい」と抱負を語ったほどである。

その榊原氏が会長を務める東レは1926(大正15)年の創業で、繊維が花形産業の時代の代表的な企業だが、鉄鋼、自動車など経団連の歴代会長の出身企業に比べれば、経営規模は小さい。だが、宇宙・航空や自動車部品などには欠かせない炭素繊維では世界トップシェア。

榊原氏は社長時代に米ボーイング社と粘り強く交渉し、次世代ジェット旅客機「B787」向けの長期供給契約を締結。加えて自動車産業への事業拡大も積極的に推進した。また、ユニクロの肌着などに使われる特殊な繊維素材「ヒートテック」のヒット商品を生み出すなど、先端素材で「名門・東レ」を復活させた“実力派”。

太平洋戦争で父親を亡くした。県立高校から進学した名古屋大学時代は、学費と生活費をアルバイトで稼ぎながら、研究室で夜遅くまで応用化学の実験に没頭した努力家でもある。地盤沈下の声がやまない経団連だが、まずはその財界総本山の復権に向けてどこまでリーダーシップを発揮できるのか。持ち味の気概と革新的なモノづくりに情熱を傾ける榊原新会長の手腕に視線が注がれる。

(写真=時事通信フォト)
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なぜそれでも「同期トップ」の役員になれたか -東レ経営研究所特別顧問