人手に頼っている寺院の修復工事

チベットは見どころ満載の地だ。チベット族の聖地・ポタラ宮を初めて見たときにはさすがにテンションが上がった。ダライ・ラマの夏の離宮だったノルブリンカや庶民に愛されているお寺ジョカン(大昭寺)も忘れられない。

ヒマラヤを望む標高4441メートルに位置するヤムドゥク湖の雄大な景色は時を忘れて見入ってしまうほど神秘的だった。わずか数日間の滞在で、記憶に残る場所がこれだけ数多くある旅を私は初めて経験した。

そんな中で、今回私が最も印象に残っているのは、ラサから車で1時間ほど行ったところにあるガンデン寺(甘丹寺)というお寺だった。標高4000メートルを超える山の稜線近くにいくつもの建物が林立する姿に圧倒される。

この寺の歴史は古い。チベット仏教最大宗派であるゲルク派の創始者であるツォンカパによって1409年に創建された。ダライ・ラマもゲルク派である。最盛期には7000人もの僧侶がここで修業していた。

しかし、1950年代に中国人民解放軍がチベットに侵攻。59年3月、ダライ・ラマ14世はインドへ亡命し、チベットは中国政府の統治下に置かれた。

ラサ郊外にあるガンデン寺へ石を運ぶ少女。

それと同時にチベット仏教の寺院はことごとく破壊された。総本山であるガンデン寺は徹底的に破壊され、廃墟と化した。多くの僧侶たちはインドに亡命した。

90年代になり、中国政府の方針変更によって寺院の再建が始められた。ガンデン寺も修復工事が始まり、建築物は少しずつ復元されている。修復工事といっても、重機などは一切使われていない。ほとんどを人手に頼っている。建物に使われる重い石材を年端もいかない少女たちがいくつも背中に背負わされ、舗装もされていない急坂の上り下りを繰り返している。

私はその姿を見て、言葉を失った。これではまるで“奴隷”だ。こんなことを絶対にさせてはいけない。私の胸は怒りと哀しみでいっぱいになった。