個人、企業、国家が個人情報を収集している

「漏れないデジタル情報はない」――。これは、二重の意味において妥当する。

第一は、私たちのデジタルデータが、個人によって、企業によって、国家によって収集されているということである。

個人レベルで言えば、友人に送ったメールが知らないうちに他人に転送されているという経験をした人も多いだろう。つきあっていた彼に頼まれて撮って送った自分のあられもない姿が、交際を絶ったあとで、いわば報復的にネットに上げられてしまう(リベンジポルノと呼ばれたりする)。紙の封書には一応「信書の秘密」といった考えがあり、他人の手紙の封を切って読んだり、それを差出人の許可なく他人に見せたりはしないというたしなみが、デジタルの便利さの前に雲散霧消している。

リベンジポルノについて言えば、フィルム写真でそのような写真を撮るという発想がふつうにはわかなかった。フィルムは現像に出さざるを得ず、どうしても第三者の目にふれるから、いくら好きな彼氏に頼まれても、その種の写真を撮ったり、撮らせたりするということはめったとなかったのである。

企業レベルで言えば、これは個人情報、顧客情報の収集である。グーグル、フェイスブック、アップル、アマゾンといった大手企業は、個人情報を収集するためにこそ、すぐれて魅力的なアプリケーションソフトを惜しげもなく、無料で提供している。ユーザーのメールの中身、フェイスブックで「いいね!」ボタンを押した内容、オンラインショッピングの履歴、ウエブの閲覧記録などなど、それらの情報は分析されて、車好きには最新の車、高級別荘を買いそうな顧客にはリゾートマンション、ピンク色が好きな人にはピンクの下着を、といったように、ターゲットをより絞った広告が配信される。