「働いても高が知れている」という妻には、老後までの収入のシミュレーションを見せたい。仮に40歳から60歳まで働くと、月収8万円のパートなら20年間で1920万円、月収15万円の派遣社員なら3600万円の収入を確保できる。「マンションが買えるくらいの差がつく」といえば、妻の心も動くはずだ。

12年は社会保障に関連する法律の成立が相次ぎ、パートタイマーへの厚生年金の適用が拡大された。従来、パートは週30時間以上働かないと厚生年金に入れなかったが、16年10月からは週20時間以上に緩和される。これを受けて、「20時間以上働けば厚生年金の保険料を天引きされる。かといって20時間未満ではたいした収入にならないから、わざわざ働きたくない」と考える妻も出てくるだろう。しかし、老後にもらえる年金は、我々の家計を大いに助けてくれる。働ける環境があるなら、無理に労働時間を抑える必要はない。

働くことを拒む専業主婦は、「家事も立派な労働。専業主婦も働いていないわけではない」と主張する傾向にある。たしかに家事は大切な仕事に違いない。ただし、夫婦で役割分担して夫を仕事に集中させたところで、給料が簡単に増える状況ではない。家計の危機を乗り切るには、分担より協業の発想が重要だ。そのためには、夫が積極的に家事を担う必要がある。家事を夫婦で協業してこそ、妻に「収入も夫婦共働きで」といえるのではないだろうか。

ファイナンシャルリサーチ代表 深野康彦 
1962年生まれ。大学卒業後、中堅クレジット会社などを経て、2006年ファイナンシャルリサーチを設立し、現職。著書に『会社が傾いても「自分だけは大丈夫」病』。
(構成=村上 敬 撮影=大沢尚芳)
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