2010年4,018万→2013年356万円の謎

表を拡大
表2:平成22年 家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査]金融資産保有額(年令・年収別)

前出の金融資産保有額に関して、もうひとつの表2、2010年調査分も確認してみてください。ここでもやっぱり気になるのは、やはり自分に該当する欄ですよね(笑)

今回は、20歳代の750万~1,000万円未満世帯に注目してください。

2010年と2013年、2つの調査を見比べてみると2010年には平均4,018万円あった貯蓄額が、たった3年で356万円まで下がっていることがわかります。どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

種明かしをすると、2010年の20歳代で年収750~1,000万円の調査対象者はたった1人でした。この調査対象人数は約4000世帯なので、たまたまその年代と年収で調査対象になった人が極端に少ない場合は、「調査結果はウソではないけれど、生活実感からはホントでもない」ということが起こりうるのです。

そしてこれは、この調査だけに限ったことではありません。

先ほどご紹介した「総務省の家計調査」では約8000世帯の調査を行っていますが、年代別かつ年収別の分析は行っていないため、20歳代の年収300万円の会社員がこの調査結果を見ると、平均値1,244万円も中央値735万円も自分の感覚とは異なる印象を持つのではないでしょうか。

統計データを見る時には、サンプル数はもちろん、分析方法も確認する必要があるのです。

私はファイナンシャル・プランナーとして統計資料を目にする機会が多いのですが、統計データの専門家ではないからこそ、自分の経験と照らし合わせて疑問を持つデータを見たときは、必ずその調査方法などを確認するようにしています。

たとえば、「シニア層、約8割がインターネットをよく利用すると回答」(MMD研究所)という調査もありますが、自分の身近なシニアを見た限りではそこまで普及していないような気がしました。そこで、調査方法を調べてみると、調査方法は「インターネット」なのです。となると……回答するのはもちろん、インターネットの利用者ですから、利用率は自然に高くなりますよね。