顧客の声を聞き顧客が喜ぶモノをつくる

同社の「セブンゴールドシリーズ」では、小売業のオリジナル商品には珍しくテレビCMを行っている。「セブンゴールド 金の麺」で人気歌手グループSMAPの香取慎吾を起用しているのだ。この理由について、株式会社セブン&アイHLDGS広報センターの伊藤真由美氏は、「PBは、(広告費を抑え)値頃感を出すようなやり方をこれまでしてまいりましたが、お客様に(直接)お伝えしないとなかなか価値が伝わらない」ということを感じ、「有名芸能人を使うことによってどれだけ知名度が上がるのかを試したかったのと、何はともあれ消費者に一度手に取ってもらい、試していただきたかった」と指摘する。

この結果は、「非常に反響も大きく、売り上げが伸びた」だけでなく、「金の麺が突破口になることによって、セブンゴールド全体へのアピール度が高まり、例えば金の麺がおいしかったので、金の食パンも食べてみようとか、金のハンバーグも食べてみようという形で、このシリーズ全体のイメージアップが図れた」(伊藤氏)という。

PB、ダブルチョップ、ノーブランドという形で、小売業のオリジナル商品の開発には、長い歴史がある。だが、小売業者自身が工場まで持つことは稀で、やはり「物」としての商品をつくるのはメーカーが主である。当然、メーカーには、製造に関しては自分たちこそプロフェッショナルだという自負が強く、小売業者からの提案に抵抗を示す場面が予想される。小売業者サイドから「こういうものをつくってください」あるいは「こういう製法でやってください」と積極的に提案されたときに、「それはできません」と拒絶されたり、抵抗されることがあると思われる。

この点について中村氏に問うと、その答えは予想通り、「数多くあります」とのことだった。とりわけ、セブンゴールドの場合、キリンビバレッジ、サントリー、ロッテアイス、伊藤園、東洋水産など日本を代表するトップメーカーとのコラボが多い。そのため、メーカーのモノづくりへの意気込みやプライドは相当なもので、小売業者からの要望が容易に聞き入れられなかった。このような状況に直面した場合、どう対処するのかに関して、中村氏はこう語る。「われわれセブン&アイHLDGSのメンバーは常に鈴木会長の『お客様の立場に立って考えろ』と『常にお客様視点だ』というDNAがあり、お客様のニーズがあるのに、できないということであれば、できるようにそれを徹底的に伝え続けます。プロダクトアウトにならないように(メーカーに)納得、理解いただけるまでとにかく説得します」。

同社には、常に消費者ニーズに立脚したマーケティングの基本精神が生きている。消費者のニーズを知るためにマーケティング・リサーチをきちんと行い、その結果に基づいて忠実にオリジナル商品の開発に取り組んでいる。その安易に妥協しない姿勢が上質の商品を世に送り出し、高い成果へと結実しているのであろう。