2014年4月7日(月)

PB商品「金の食パン」が高くても売れる理由

PRESIDENT 2014年3月17日号

著者
野口 智雄 のぐち・ともお
早稲田大学社会科学総合学術院教授

1956年、東京都生まれ。一橋大学大学院博士後期課程単位修得後、横浜市立大学助教授を経て94年から現職。2006年から08年まで、客員研究員としてスタンフォード大学経済学部で活躍。88年、『現代小売流通の諸側面』で日本商業学会賞を受賞。『水平思考で市場をつくるマトリックス・マーケティング』『なぜ企業はマーケティング戦略を誤るのか』など多数の著書がある。

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早稲田大学社会科学総合学術院教授 野口智雄=文
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製造メーカーが記されたプライベートブランド

かつて小売業がつくるプライベートブランド(以下、PB)はある種、日陰者だった。商品の価格は類似のナショナルブランド(以下、NB)に比べて明らかに安いものの、品質に関しては価格相応かそれ以下という印象だった。PBを製造しているメーカーも、小売業者の下請けに甘んじる中小の無名メーカーが多く、価格の安さと相俟って品質への不信感を高めていた。

このタイプの商品のネガティブ・イメージを打ち破り、価格訴求ではなく、価値訴求という新次元の扉を開いたのが、セブン&アイグループの「セブンゴールドシリーズ」である。このラインナップは、有名メーカーと共同開発した商品ばかりであり、価格も同種のNBに比べて明らかに高く設定されている。それにもかかわらず例えば「金の食パン」は昨年5月の発売から12月までで実に約2500万食と、驚異の累計販売量を記録している。

同社は、自社のオリジナル商品にいわゆる「PB」という言葉を使わない。その理由は、通常のPBの場合、販売元の名前は明記しても、製造メーカー名を開示しないケースが多いからだ。これに対し、セブン&アイグループのオリジナル商品は、製造メーカーをきちんと明記し、どことチームを組んで商品を開発したのかがわかるようにしている。それゆえ、同社は以前から、 オリジナル商品の開発のことをチームマーチャンダイジングと呼んでいるのだ。

今回お話をうかがった株式会社セブン-イレブン・ジャパン商品本部FFデイリー部チーフマーチャンダイザーの中村功二氏は、小売業のオリジナル商品の発展を3段階に区分している。第1段階は、安さを追求する時代で、どこでつくっているかわからず、「安かろう、悪かろう」の商品を出していた時代だ。続く第2段階は、NBの売れ筋商品の品質と同等あるいはそれ以上でありながらも、実勢価格で2、3割安価というようなものだ。いわゆる「お買い得感」のある商品を提供していた時代である。そして今日迎えている第3段階は、小売業のオリジナル商品だからこそ、「優れている」、あるいは中村氏の表現によると、「セブン&アイホールディングス(以下セブン&アイHLDGS)の店に行かないと味わえない」という価値訴求型のオリジナル商品の時代だという。今や小売業のオリジナル商品は、品質面でNBを凌駕し、それどころか模倣される存在にまでレベルアップしているのである。事実、食パンに関して、有名メーカーが明らかに「セブンゴールド 金の食パン」を意識した商品の開発を行っている。

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