2014年3月28日(金)

専門家が捨てられる時代がやってきた

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2014年2月17日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

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茂木 健一郎 写真=AFLO
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仕事ができる人というのは、どういう人を指すのか。世間には、大きな誤解があるように思う。

現代の社会は、人々が結びついて、協力しあうことで仕事が進んでいく。以前からそうであったが、特に、インターネットの発達によって、その傾向が強くなった。

「アウトソーシング」という言葉があるように、必ずしも、「会社」という単位にこだわらなくても、必要な技能や能力を集結できるような時代になった。そして、そのチーム・ビルディングは、簡単に国境を越える。

アイルランドにコールセンターがあり、インドにIT関連の技術者チームがいて、カリフォルニアにデザインラボがある。そんな仕事の仕方が、グローバルに展開する企業では、普通になってきた。

このような時代に必要とされる人材は、特定の能力に長けていることはもちろんだが、むしろ、人と人とを結びつけることができる人だろう。そのような求められる人材の変化に、人々の意識が追いついていない傾向があると思う。

自分ができなくても、できる人を知っている。あるいは、誰に任せることができるか、判断できる。このような能力は、管理職はもちろんのこと、一般社員でも必要な能力となっている。

例えば、IT関連の仕事をするためには、コンピュータのプログラム能力があったり、最新の技術を知っていなければならない、というのは単なる思い込みである。実際、世間で注目されるIT関係のベンチャー企業の創業者と会って話していても、ITオタクでない人は、たくさんいる。

むしろITの細かい点については、「えっ、こんなに緩いのか」「いい加減なのか」と驚くくらいの人のほうが、優れたベンチャー経営者になっているように思う。仕事を進めるうえで必要な能力は、一つ一つの「点」にではなく、その「間」にこそあるのである。

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