2014年6月12日(木)

オリンピック選手に学ぶやり遂げる力

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2014年3月31日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

執筆記事一覧

茂木 健一郎 写真=AFLO
1
nextpage
浅田真央選手のフリー演技後の涙と晴れやかな表情は、日本中を感動の渦に巻き込んだ。(AFLO=写真)

ソチ五輪の熱戦を、夢中になって見た、という方は多いのではないか。

羽生結弦選手の、男子フィギュアの金メダルは素晴らしかった。また、残念ながらメダルには届かなかったけれども、浅田真央選手のフリーにおける渾身の演技も、見ていて涙が出た。

スキージャンプの「レジェンド」葛西紀明選手の、41歳を超えてのメダルは感動したし、冬のオリンピック史上日本人選手として最年少での、平野歩夢選手のスノーボードでのメダルにも、大いに元気づけられた。

私たちは、なぜ、オリンピックを見て、感動するのだろう? アスリートたちの大活躍に、どうして胸を躍らせるのだろうか? そこに、私たち人間誰にとっても参考になり、インスピレーションともなる「生き方」が表れているからではないかと思う。「遠い目標」のために、「今、ここ」を頑張る。それが、アスリートの生き方。メダルを獲得することはもちろん、オリンピックに出場すること自体が、若いアスリートにとっては遙かに遠い目標だ。

その、最初は幻のような目標に向かって、少しずつ、自分の技を磨き、体力を高め、運動能力を積み上げることで、初めてオリンピックへの出場が可能になる。このような、「遠い目標」を目指して「今、ここ」を努力するという生き方は、私たち一人ひとりにとっての1つのインスピレーションとなる。

仕事をするうえで、苦しいことはたくさんあるだろう。辞めたいと思ったり、逃げ出したいと感じることもある。そんなときでも、遠い目標があれば、耐えられる。何よりも毎日の努力に、意味が生まれる。

遠い目標は、社内の立身出世だけとは限らない。自分で会社をつくって大きくするという夢を持つ人もいるだろうし、イノベーションを起こすこと、世のために人のために役に立つことを目指す人もいる。

それは、漠然とした抽象的なイメージかもしれないし、鮮明で具体的な課題かもしれない。遠い目標があるからこそ、今、ここの苦しさに耐えられる。オリンピック出場のアスリートたちから学べる生き方が、ここにある。

PickUp