給料は……

厚生労働省の有識者研究会は13年8月20日、労働者派遣制度の規制緩和を求める報告書をまとめた。

企業が一つの業務に派遣労働者を充てられる期間を最長3年に制限する「3年ルール」を撤廃するなど、どんな業務でも人を入れ替えれば派遣を使い続けられるように改めるのが特徴。労働者側からすると正社員が派遣に置き換えられたり、非正規雇用が増える懸念がある。

仕事や勤務地などを契約で限定する限定正社員のルール整備も検討されている。しかし森永氏は「限定社員であれば所属する営業所や工場を閉鎖すれば解雇できる」点に不安を抱く。「転勤がないからといって安易に選ぶべきではありません」。

エリート層も安心はできない。政府は1日8時間、週40時間が上限となっている労働時間の規定に当てはまらない働き方「ホワイトカラー・エグゼンプション」を14年度から試験的に導入する方針だ。

大企業の年収800万円を超えるような課長級以上や専門職の社員は繁忙期に休日返上で働き、閑散期にはまとめて休むといった働き方を選べるようになり、一定の年俸と成果に応じた給与を受け取る。うまく機能すればいいが、森永氏は「残業代なしで無制限に働かされる恐れがある」と危惧する。

アベノミクスで恩恵を受けるのは大企業、株式・不動産などの資産。潤うのは企業オーナーや資産家にすぎない。非正規雇用が増え、正社員であっても給与は抑えられるという方向性だ。

「つまり正社員も非正規社員も地獄を見ることになるかもしれません。現在は3分の1が非正規社員ですが、その割合が急速に増えて超格差社会が生まれるでしょう。ただ、経済のパイは大きくなるので見かけ上は景気が良くなり、一部の社員は何億円という報酬を受け取ることができる。その一方で大多数の人は給料が減りズルズルと貧困生活に向かって落ちていく」