著者が言いたいことは本書の書名に凝縮されていると思う。しかし、実際に読み始めてから、私はサブタイトルを「繁栄する米国、消える中国などの新興国の夢」としてもおかしくはないと感じた。国際政治や外交とも絡んでくる内容であり、その重みを考えると、最後まで目を通さないではいられなかった。

たとえば、先端技術の集積と充実したパイプライン網などのインフラをもつ米国はシェール革命によってエネルギーの自給自足を可能にしたばかりではなく、新たな産業基盤も創出できた。そのため、海外に出ていた製造業がどんどん国内に回帰する現象が起こっているという。

結果、中国を世界の工場と見ていた「世界の常識」が覆されてしまう。21世紀を「新興国の世紀」という見方も思いこみであり、再び「米国の世紀」になるという予感が現実になってくるのだ。

シェールガスから抽出できた安い天然ガスを手に入れた米国から、日本も貴重なおこぼれをもらい、明るい展望が開けてきている。天然ガスを原料とする化学系の日本企業のみならず、シェールガス開発に不可欠なシームレスパイプを製造する、または水処理に強い日本企業も開発現場に大きく組み込まれる可能性が出てきた。

ここまで読むと、日米両国の国力は旭日のように昇り、逆に中国とその他の新興国がこれまで抱いていた発展の夢は見事なほどに破れてしまうことになる。

しかし、シェールガス関連の資料を調べてみたところ、埋蔵量においては、実は中国が1位だそうだ。アルゼンチン、アルジェリアの埋蔵量も米国のそれを上回っている。さらに、米国のエクソンモービル、シェブロン、コノコフィリップス、ヨーロッパのロイヤル・ダッチ・シェルなどの石油大手がすでに中国に進出、中国政府とシェール開発や利用についての契約を結んでいるのだ。

世界最大の油田検層事業や油田サービスを行うシュルンベルジェ、石油パイプライン施設整備など原油採掘関連サービスを世界120カ国以上で展開するハリバートン、石油系資源採掘のメジャーであるベーカー・ヒューズ、掘削サービスや人工採油システムに強いウエザーフォードなどの多国籍企業も、シェール開発のために中国での営業活動を拡大している。

こうして見ると、エネルギー不足に苦しむ中国はいずれ大規模なシェール開発に力を注ぐだろうと私は思う。もちろん先行する米国と比べると、中国はより厳しい開発環境に置かれ、どれほどの経済的効果や政治的効果を得られるのかは不明だ。

ともあれ、冷静に考えると、本書は21世紀が「新興国の世紀」かそれとも「米国の世紀」かを占う視点で読むより、むしろ最新の資源開発に関する情報書の一つとして読んだほうが適切なのではないかと思った。