医療事故死の原因分析と再発防止を目的とする「医療版事故調査委員会」を設置する法案が通常国会に提出される。

医療事故調を巡っては、2008年に厚生労働省が事故調を行政機関として設置する案をまとめたが、悪質なケースを事故調が警察に通知するとした点に民主党と医療界が猛反発、その後の民主党への政権交代でいったんお蔵入りとなった。

一昨年の自民党の政権復帰で議論は仕切り直しとなったが、日本医師会の支援を受けている複数の自民党医系議員から「医療事故で医師の過失責任を問うべきではない」と強い反対意見が出され、一時法案提出が危ぶまれた。だが最終的には、2年以内に法案の内容を見直す規定を盛り込むことで自民党厚生労働関係部会が了承。何とか法案提出にこぎつけた。

とはいえ、今回の法案が成立しても、来年10月に医療事故調を設置することが決まるだけで、事故調の組織や権限など細部については、今後1年半かけて法案を作っていくことになる。

論点の中で、医療界が強く反発してきた「事故調から警察への通知」については、厚労省案は通知しない考え。これは合意できそうだが、問題はほかにもある。

厚労省案では、医療事故を起こした医療機関は院内の調査委員会が調査し、その後、医療事故調が調査する仕組みだが、医療過誤原告の会・宮崎正和会長は、「遺族が医療事故を指摘しても、医療機関側が事故ではないと否定したときに事故調が調べてくれるかどうか曖昧。つまり医療機関が事故ではないと言えば、院内調査はおろか医療事故調の調査も行われないかもしれない。また院内調査を行い、それに遺族が納得できない場合に、遺族が事故調に調査を申請できるかどうかもハッキリしません」と懸念を示す。

また厚労省案では、医療事故調の調査は都道府県単位の支援法人・組織が行うことになるが、一県一医大の地方の場合、医大の影響力は県内の医療機関すべてに及び、第三者機関とは名ばかりの「身内」による調査になりかねない。本来なら「都道府県単位ではなくブロック単位で調査を実施すべき」(野党医系議員)だが、医療界には都道府県単位を望む声が強い。事故調が骨抜きにならないよう、世論は厳しく監視していくべきだろう。