グローバル化で、盛んになる企業の合併・再編。日本企業がこれまでどのような合併劇を経てきたのか。過去30年の大きな流れをまとめた。

08年秋のリーマンショック後は守り志向の再編が強くなった。11年のパナソニックと三洋電機の統合もリストラ狙いの後ろ向きのもの。NECとカシオ、日立製作所の携帯電話事業など事業統合も増えたが、これも守り志向だ。

大きな話題では10年のキリンとサントリーの経営統合の破談がある。守りの統合ではなかったが、公開会社と非公開会社が一緒になるのは難しい。企業文化が大きく異なるからだ。

今後、強まると予想されるのは、日本市場の小さな枠ではなくグローバルを意識した合併や統合だ。鉄鋼業界では、新日鉄と韓国のポスコ、中国の宝鋼集団、インドのタタ製鉄の4つがくっつくケース。これくらいやらないとミタルに対抗できない可能性がある。

こうした日本企業が主役を担うグローバル合併の数は少ない。例外が東芝がウエスチングハウスを買収した06年の事例。西田厚聰社長(当時)が選択と集中を徹底し、原発と半導体の2分野に大きく舵を切った。背景に新興国で原発需要が大きく伸びるという読みがあり、実際正しかったが福島第一原発事故で微妙な状況になっている。

同じパターンで、「ありえない」と一笑に付されていたが、今やありえなくもないケースに、サムスンによるソニーの吸収合併がある。10年、レナウンが中国の山東如意科技集団の傘下に入ったように、新興国の成長企業に日本企業が買収される例も増えるだろう。その場合に狙われるのは、事業力はあるが経営力がないため時価総額が低い日本企業で、その数は少なくない。これは日本企業の現場のレベルが高く経営のレベルが低い証左でもあり、経営者が反省を迫られる可能性もある。

また、日本企業は国内プレーヤーが多すぎて規模が小さいために海外進出できないという議論があるが、発想が間違っている。小さいから出ていけないのではなく、出ていかないから大きくなれないのだ。85年のプラザ合意直後、企業の海外進出は国内機能を空洞化させ、雇用が減るという議論があったが、現実は正反対。積極的に海外進出した企業ほどビジネスを拡大させ、国内でも空洞化に見舞われるどころか、研究開発やマザー・ファクトリー機能の重要性が高まり、雇用が増えた。

今、グローバル化の必要性が叫ばれているが、東アジア地域の人口がピークを迎える30年までは「グローバリゼーション=アジアナイゼーション」だ。その後のインドなどの南アジアの時代では、インドが英語圏であるため、米国企業が有利になるだろう。次のアフリカの時代では、旧植民地の関係で今度は欧州企業が有利になると考えられる。そう考えると、今から30年までが日本にとっての最後のチャンス。チャンスをうまく生かせるかどうかは、攻めの企業再編をうまく仕掛けられるか、にかかっている。