経済成長率が急速に減速し始めた理由

経済のグローバル化の進展に伴って、おカネが世界中を移動して回るのと同じように、経済危機もグローバルに波及するようになってきた。2007年から08年にかけてアメリカで発生したサブプライム・ローン危機は、リーマン・ブラザーズなどのアメリカの金融機関のみならず、欧州の金融機関をも巻き込んで世界金融危機に発展した。その後、ギリシャの財政統計の改竄がトリガーを引いて、ユーロ圏で財政危機が発生。さらに、世界金融危機およびユーロ圏の財政危機に対処するために採用された欧米の金融政策、すなわち、超低金利の下での量的緩和によって、BRICsなどの新興市場国においてバブル経済の様相を呈したが、のちに述べるように、今、これらの国々の経済成長率は急速に減速し始めている。

00年代に入って、世界経済は、アメリカの経常収支赤字を中心とするグローバル・インバランス(世界的な経常収支不均衡)に直面した。そのなかで、アメリカの経常収支赤字の持続可能性が疑問視されながらも、米ドルを基軸通貨とする国際通貨体制の下でその経常収支赤字が拡大してきた。一方、00年代半ばの経常収支赤字は、国内貯蓄不足のなかでの過剰な住宅投資を原因としていた。アメリカの財政赤字・経常収支赤字をファイナンスしたアジアの過剰な貯蓄が問題であると、バーナンキによって指摘されたものの、住宅投資の資金は、国内貯蓄はもとよりアジアの貯蓄にも頼ることができなかった。それは、石油輸出国から欧州の金融機関を通じて調達され、アメリカの住宅投資を下支えした。

アメリカにおいて、住宅バブルのなか住宅価格上昇期待に基づいて、本来、信用リスクが極めて高いために住宅貸し出しの対象となり難い低所得者層向けにサブプライム・ローンという形で住宅貸し出しが行われた。その信用リスクを他に移転することを目的としてサブプライム・ローンを担保とした証券化商品がアメリカの金融機関から欧州の金融機関に売り渡された。これは同時に、アメリカ国内で不足する貯蓄を補うための資金調達手段としての役割を果たした。その資金源は、中近東諸国やロシアなどの石油輸出国の経常収支黒字を、欧州の金融機関によって国際的に金融仲介する形でアメリカへと流れていった。その意味では、欧州の金融機関は、石油輸出国の経常収支黒字とアメリカの経常収支赤字との間の国際金融仲介を担った。

しかし、アメリカで住宅バブルの崩壊によって住宅価格が下落し始めると、住宅価格上昇期待に隠されていたサブプライム・ローンの高い信用リスクが顕在化した。住宅バブルの崩壊とともに、サブプライム・ローンが不良債権化し、サブプライム・ローン証券化商品も回収不能となった。これらのサブプライム・ローン証券化商品を多く保有していた欧州の金融機関もアメリカの金融機関と同様の影響を受けた。