世界に冠たる技術力を武器に、製造業が輸出で稼ぐ日本の「貿易立国」の基盤に危うさが漂い出してきた。モノやサービスなどの海外との取引を示す昨年11月の経常収支が、単月としては過去最大の赤字額に膨らんだからだ。2013年暦年の経常黒字額は過去最小が見込まれ、数年後には経常赤字国へ転落する懸念が現実味を増してきた。

財務省が14日発表した11月の国際収支(速報)によると、経常収支は5928億円の赤字だった。統計を比較できる1985年以降で、12年1月の4556億円を上回り、過去最大の赤字額に達した。主因は、経常収支を構成する輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が11月としては過去最大の赤字額(1兆2543億円)に陥ったためだ。原子力発電所の稼働停止が続き、燃料の液化天然ガス(LNG)や原油の輸入数量が増えたうえ、円安の進行からドル建て取引がさらに燃料費輸入額を嵩上げした。

しかし、単月ベースでの巨額な貿易赤字が続く主因を、燃料輸入増大だけに押しつけている次元は、もはや終わりつつある。円安が進んでいるにもかかわらず、日本企業の輸出で稼ぐ力が衰え、円安により一時的に輸出が落ち、その後に急回復する、いわゆる「Jカーブ効果」が顕在化していないのが現実だからだ。

安倍晋三政権による経済政策「アベノミクス」の第一の矢として、日銀が昨年4月に放った「異次元緩和」から7カ月が経過。いまだJカーブ効果が生じないのは、ある意味でアベノミクスの誤算でもある。日本企業の海外生産が拡大し、円安が進行しても輸出増につながらず、円安の恩恵は自動車などに限られ、貿易赤字から抜け出せずにいる。甘利明経済再生担当相は「貿易立国の原点が少し揺らいでいる」と日本の産業構造の変化への認識を示すものの、危機感は緩い。

安倍政権が描く日本経済復権のシナリオは、輸出型企業が牽引する姿だった。しかし、現状を見る限り、数年後に経常赤字国転落へのカウントダウンに入りかねない。「岩盤規制」の緩和・改革をはじめとして、アベノミクスの第三の矢である成長戦略に手詰まり感も。4月の消費増税が目前に迫るなかで、アベノミクスの真価も問われかねない。