“小泉劇場”に沸いた2005年の郵政選挙をご記憶だろうか。当時の小泉純一郎首相は改革派を名乗り、郵政民営化に反対する“守旧派”自民党議員に小泉チルドレンという刺客を次々に送り込んだ。

メディアは活劇さながらの選挙戦に沸き立ち、小泉氏の絶叫がメディアを通じて日本中に轟いた。ところが今回の都知事選では、メディアは小泉氏の動静をほとんど伝えず、事実上黙殺した。なぜか。民放テレビ局の前報道局長は「05年の“小泉劇場”のツケが回ってきたということ」と前置きして、こう解説する。

「郵政選挙の際にメディア、特にテレビはワイドショーを筆頭に小泉氏を大々的に取り上げ、結果的に小泉自民党を大勝させた。小泉氏に振り回されたのです。中立のはずの報道機関が権力のお先棒を担いだわけで、当時の反省から、その後の各種選挙ではワイドショーも一方の陣営に大きく偏った放送を自粛するようになったんです。今回の都知事選でも、たとえばフジテレビでは告示前の局内の話し合いで“小泉氏は候補者ではないから、小泉・細川護煕両氏のツーショットの放送は避ける”と決まった。また反自民党的傾向が指摘されるテレビ朝日ですら“小泉氏の映像はなるべく流さない。流す場合は、他の陣営の応援弁士も公平に放送する”と決め、これを徹底した」

テレビ朝日報道局員もこう話す。

「ワイドショーからは視聴率が取れる小泉氏の映像がほしいとの要望はあったが、極力抑えた。実は、これには郵政選挙の反省だけでなく、訴訟の影響もありました。猪瀬直樹氏が当選した一昨年の都知事選で落選したある候補が“落ちたのはマスコミが猪瀬氏を大きく取り上げたからだ”とテレビ局を訴えたのです。このため各テレビ局とも小泉氏ばかり取り上げると他陣営から訴えられると恐れ、公平な報道に努めたのです」

こうしたメディアの事情だけでなく、小泉氏のやる気にも疑問が投げかけられている。TBS社員が言う。

「新聞、テレビは公平な報道を強く求められているが、ラジオや雑誌、夕刊紙、スポーツ紙には特に規制はない。そこでTBSラジオが小泉氏を番組に呼ぼうとしたが、小泉事務所から“ラジオには出ない”と断られた。自分を安売りしたくないという理屈らしい。本気で細川氏を当選させたかったのか、疑問が残る」

小泉劇場はもう二度と見られない?