評判の芳しくない宰相は、「日本経済は全治3年」といった。漢字の誤読はともかくとして、景気の回復には5年かかるとの異論もある。国内における企業の経営統合をはじめとする再編にも拍車がかかっている。では、世界的な視野では日本企業の実情はどう捉えられているか。

業界を問わず吹き荒れる「合併・再編」の嵐
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業界を問わず吹き荒れる「合併・再編」の嵐

世界中の投資ファンドを顧客に持つ野村証券のファイナンシャル・スポンサー部長、住野豪生氏は、こう解説する。

「円高を背景に、日本ではとくに食品、薬品の企業が積極的な企業買収を進めています。また、日本は金融機関もマーケットも世界の中では相対的に健全で、海外の機関投資家から注目されています」

今後は、日本企業が海峡を越えて合併に乗り出したり、逆に買収の波にさらされたりする機会もさらに増えるらしい。米国では自動車メーカーが3社に集約されているのに対し、日本では大手6社が連なる。家電メーカーが多いことは、海外だけでなく日本国内でも疑問視されている。そして、未曾有(みぞう)の少子高齢社会。住野氏は、「いまの日本のマーケットを前提に成長の絵を描くのは難しい」と語りつつ、日本企業の美点と課題を挙げる。

「企業文化の共有、従業員の一体感、顧客の信頼など、経営や雇用に対する長期的なコミットメントを重視する日本には、海外の投資家の期待値も高い。ただし、どの程度の時間軸でやるかが、まだ世界のスタンダードとは開きがあるので、スピード感を少し早める必要があります」