住宅関連事業の特徴は、長期的視点で事業を推進する点にある。この対極とされるテレビ事業は、買い替えサイクルも約7年と短いうえに、技術革新のスピードも速く、工場設備の増強なども一気に展開する必要がある。このサイクルの中で戦った“テレビ事業の失敗”が今回のパナソニックの業績悪化を招いたのは、津賀社長も認めている。

住宅設備は10~20年、住宅そのものは、30年以上と、「寿命の長いビジネス」で、パナソニックが独自に築き上げた“長年培ったビジネスの経験”が生かされる領域である。パナソニックが電材や住設機器で、実績を積み上げてきたことが“大きな強み”となる。

ES社は、国内事業の強化、アジア、中国、インドでの海外事業拡大を柱とする「基盤事業」と、「エナジーマネジメントシステム(EMS)事業における付加価値拡大」「エンジニアリング・サービス事業へのシフト強化」「リフォーム事業の強化」の3点で構成する「成長事業」に取り組む。成長事業の売り上げ構成比は12年度実績でES社全体の40%を占めるが、15年度には、50%に引き上げる計画だ。

「『創エネ、蓄エネ、省エネ』(エネルギーの創出、エネルギーの蓄積、エネルギーの効率的な利用)は、パナソニックが得意とするところ。さらに、分電盤、配線器具、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)などの『配エネ』分野も得意とする領域だ。住宅関連事業の成長の鍵はエネマネにあり、それを軸にして電気に関するトータル提案を行える」(吉岡社長)

こうして見ると、住宅内のパナソニックの“商品”は、冷蔵庫や洗濯機、エアコン、テレビといった“家電商品オンリー”という見方は、間違いである。普段は見えない「住宅内の裏の部分」にもパナソニックの商品や技術が数多く採用されており、実はこの見えない部分で「高い占有率と高い利益」を生み出しているのだ。