「ヤンキー文化」が求めるデザインを

2011年冬、「ニュー ネクストニッポン ノリモノ」のキャッチコピーで発売されたN BOXは、自動車業界に衝撃をもたらした。2012年度の販売台数は21万台超。同じ「スーパーハイトワゴン」であるスズキのワゴンR、ダイハツのタントを抜き、軽自動車市場の競争激化を促すヒット商品となったからだ。

注目すべきは、そのハイグレード版として設定された「N BOXカスタム」が、全体の売り上げの約4割を担っていること。押し出しの強いフロントマスクやエアロパーツを装備した「カスタム」について、開発チームの白土清成さんは言う。

「我々が研究したのは、いわゆる『ヤンキー文化』と呼ばれるような地方の若者たちのテイストでした。軽自動車の重要なユーザーである彼らに訴求するデザインとはどのようなものか。実際の現場の声を聞いてきたんです」

しかし当初、開発チームの案にはデザイン部から強い反発があったという。そこで彼らが工夫したのが写真の1枚の資料。調査結果を1つの図に表し、「わからない」と渋るデザイン部に見せたのである。

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「ストーリー」を資料化

「実はホンダは『カスタム』のようなデザインが苦手なんです。ヨーロッパの洗練されたデザインを『良い』とする伝統があるからでしょう。しかし、東京に出てホンダのオフィスで仕事をしてきた人たちと、地元に残って働く若者たちとでは価値観が違って当然。なので、その価値観の背景にある『ストーリー』を資料化してみた。これで『確かにあなたたちにはわからないかもしれない。でも、わからないのがチームの求めるカスタム価値なのだ』と暗に伝えた。調査結果を見れば、現実にこうしたデザインが求められているのは明らか。10万~20万円高い価格でも、自分で車をドレスアップするよりは安上がり、という感覚が欲しかった」

売り上げの4割超を占める男性向け仕様の「カスタム」。

開発チームが社内の企画会議で貫いたのは、軽自動車のメーンユーザーとして想定する若者や女性の意見を資料の中で常に強調し、「軽自動車」に求められるものに対する社内の理解を深めることだった。例えば車内の広さと機能を説明する際も、こんな資料を作ったと実車テスト担当の西谷広滋さんは語る。

「男女混合のグループインタビューのときに印象的だったやり取りを資料の中に入れ込みました」