2013年9月24日(火)

キリン「メッツ コーラ」誕生の軌跡

PRESIDENT 2013年4月1日号

著者
中島 恵 なかじま・けい
ジャーナリスト

中島 恵1967年、山梨県生まれ。90年、拓殖大学外国語学部中国語学科卒業後、日刊工業新聞社入社、国際部、流通サービス部などで記者として活躍する。94年に同社退社、香港中文大学に留学、北京語と広東語を学ぶ。96年に帰国後、フリージャーナリストに。著書に『職は中国にあり』『ポジャギ』『中国人エリートは日本人をこう見る」、『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中央公論新社)などがある。

執筆記事一覧

中島 恵=文 澁谷高晴=撮影
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コーラは我慢の対象?

キリンビバレッジ 
マーケティング部 
中田康陽氏

「コーラは子どもの頃はよく飲んでいたんだけど、やっぱり体に悪いよね」「本当は揚げ物×コーラの黄金の組み合わせが大好きなんだけど、メタボぎみだから我慢しなくちゃいけないな」

30代、40代の男性諸氏から聞こえてきそうな不満のつぶやき。本当はコーラが大好きなのに、おなかや健康を気にして飲むのを控えているという30代以上の男性は多い。自覚している本人だけでなく「こういう人、自分の周りにもけっこういるんだよね」と、その姿が思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。

キリンビバレッジのマーケティング部新商品担当部長代理の中田康陽(みちはる)氏らマーケティングメンバーは、そんな具体的なターゲット像を絞り込んでいき、思いを数枚の企画書に結集させた。その企画書が社内の共感を喚起したことが商品開発の成功に結びつき、誕生したのが史上初のトクホ(特定保健用食品)のコーラ「キリン メッツ コーラ」だ。

食事の際に脂肪の吸収を抑制し、食後の中性脂肪上昇を抑制する難消化性デキストリンを配合。さらに糖類ゼロを実現した。トクホでありながらコーラという意外性が受け、2012年4月に発売後、瞬く間に人気に火がつき、年間目標の100万ケースを2週間で達成。12月までに600万ケースを突破する大ヒット商品となった。

開発を開始したのは07年頃のこと。当時は緑茶や烏龍茶を中心に、健康に注意する人向けのトクホ市場が盛り上がっていた時期だった。「新たなトクホの商品を考えろ」という社命が下る中で、中田氏らは「後発の自分たちがトクホ市場に切り込んでいくのであれば、従来にはない商品にしなくてはいけない」と企画を練った。

コーヒー、紅茶、炭酸など、さまざまな掛け合わせを模索し、最終的に炭酸に絞られた。同社の代表的な炭酸飲料に「キリンレモン」があるが、ほかのカテゴリーの飲料に比べ売り上げは今1つで、炭酸は“弱点”だった。トクホ×炭酸で、炭酸カテゴリーの拡充も狙ったのである。

では、炭酸の中でもどういう飲料にするか? 議論が繰り返されるうちに、誰からともなく「コーラはどうだろう」という案が浮上した。同社では、コーラは自動販売機用の商品として開発したことがあるだけで、これまで本格的に取り組んだことはなかった。

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