食の調査レポートVol.4
食の総合メディア「dancyu」の読者組織「dancyu食いしん坊倶楽部」を対象に、牛肉に対する嗜好を調査したレポート第二弾。見えてきたのは、赤身肉への高い支持でした。

dancyu総合研究所は、dancyu食いしん坊倶楽部(以下、倶楽部)メンバーを対象に、牛肉に対する嗜好を調査しました。回答数は931人(男性457人、女性471人、どちらでもない3人)。調査は2024年4月26日~5月6日にかけて、インターネットを通じて実施しました。

若い世代ほど赤身肉支持が多く、歳とともに霜降りが巻き返す

日本が世界に誇る「和牛」。その98%を占める黒毛和牛は、筋肉の中に細かく網目状に入った脂(サシ)が特徴です。サシの多い霜降りは高級牛肉の代名詞でもあり、霜降りの度合いによって牛肉の肉質等級が決まります。しかし、dancyu食いしん坊倶楽部メンバーへの調査からは、霜降り肉よりもサシの少ない赤身肉への支持が明らかになりました。

赤身主体の牛肉とサシの多い霜降りの牛肉のどちらが好きですか?

「赤身主体の牛肉とサシの多く入った霜降りの牛肉のどちらが好きか」を問うと、赤身派は霜降り派の約3倍に上りました。赤身主体の肉を好む理由の大半は、

「肉の旨味が感じられるから」(40代・女性・東京)
「とろける食感より、しっかり噛む方が好み。旨味を感じやすい」(40代・男性・東京)

に代表される、しっかりとした食感と肉の旨味に対する支持です。
一方、霜降り支持派は、

「柔らかくジューシー。上品な甘さのある脂が口の中でとろける」(60代・女性・茨城)
「脳に直接届く脂の旨み甘みは幸せの味」(40代・男性・東京)

と柔らかでジューシーな食感と脂の甘みに軍配を上げます。

赤身支持派と霜降り支持派の比率は世代によってかなり異なります。どの世代を通じても赤身派が霜降り派を上回っていますが、若い世代ほど赤身支持派の比率が高く、年齢が上がるほど霜降り支持派が巻き返しています。

赤身主体の牛肉とサシの多い霜降りの牛肉のどちらが好きですか?(男女別)
赤身主体の牛肉とサシの多い霜降りの牛肉のどちらが好きですか?(年代別)

霜降り肉が好きだった人が加齢とともに赤身肉好きに

この先、赤身主体の牛肉と霜降りの牛肉への支持はどのようになるでしょうか。それを示唆しているかもしれないのが次のデータです。「赤身主体の牛肉が好き」または「どちらも同じくらい好き」と答えた人を対象に「赤身主体の肉を以前から好きだったか」を聞いたところ、「以前は霜降りの肉の方が好きだったが、だんだん赤身主体の肉の方が好きになった」という回答が半数以上を占めました。世代別に見ても、40~60代にわたって「だんだん赤身主体の肉の方が好きになった」と答える人が半数を超え、70代以上でも46.4%に上ります。同じ人の中で霜降りから赤身への嗜好の変化が起きていることが分かります。

赤身主体の肉を以前から好きでしたか?

「だんだん赤身主体の肉が好きになった」と答えた人の多くがその理由として挙げているのは、脂に対する嗜好の変化です。

「年齢とともに牛肉の脂が重く感じられ、胃にもたれるようになったから」(60代・男性・愛知)
「サシが強い牛肉は胃にもたれ量が食べられなくなってきた。赤身の牛肉は量を食べられる」(40代・男性・東京)

また、

「40代になって健康を考えて食べるようになってからは赤身を選ぶようになった」(40代・女性・山形)

といった健康面での理由を挙げる人も少なくありませんでした。

和牛のサシの多さは消費者が好む範囲を超えてしまったかも

もっともこうした意見には、霜降り支持派からの反論もあります。

「和田金や牛銀(ともに松阪牛の有名店)のすき焼きや網焼きを食べたら違いが分かる。上質な脂は胃にもたれない」(60代・男性・三重)
「本当に良い和牛は沢山食べても胃もたれせず、サーロインでも赤身の味を楽しめる」(40代・女性・静岡)

ただし、これらの意見も、胃もたれしない上質な脂への支持であり、サシが多ければ多いほど良しとしているわけではありません。

自由意見の中に興味深いものがありました。牛肉の購入頻度は週1~2回、最も頻繁に購入するのは和牛という男性は下記のように回答。

「霜降りの程度がどんどん増していて赤身と脂のバランスを考えずに生育している。赤牛(褐毛和種。肉質は赤身主体)ですら、昔より脂が多い」(60代・東京・男性)

これは日本食肉格付協会の統計データでも裏付けられます。2024年1~4月に格付けされた和牛のうち、サシの最も多いA5等級の割合は55.7%。2014年にはA5等級は22.8%でしたから、この10年で倍以上に増えています。A5等級の和牛のサーロインやリブロースの脂肪含有率は、今や平均して約50%に達しています。現行の食肉格付が導入された1988年には最も高いランクの和牛でもサーロインやリブロースの脂肪含有率は平均23%でした。和牛は近年、明らかに脂っこくなっているわけです。

高い格付けを獲得するために、日本の和牛畜産農家はサシを多く入れる技術を磨いてきました。それは和牛の半数以上がA5等級に育つという“成果”に結実しました。しかし、消費者の赤身志向を考えると、和牛の霜降り戦略は行き過ぎの域に足を踏み入れてしまったのかもしれません。

【牛肉調査①】国内産牛肉への高い支持。海外で外国産牛のおいしさに目覚める人も!
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dancyu総合研究所では、dancyu食いしん坊倶楽部と共同した企業さま・自治体さま向けのイベント開催や調査、調査結果を基にしたコンサルティング、商品開発などの実施ができます。まずはお気軽にお問い合わせください。

【調査概要】
調査名:dancyu総合研究所「牛肉調査(2024年4-5月版)」
調査主体:dancyu総合研究所(株式会社プレジデント社)
調査方法:WEBアンケート方式
調査期間:2024年4月26日~5月6日
調査対象:「dancyu食いしん坊倶楽部」の10代〜70代以上の男女 931人(全国)