食の調査レポートVol.3
食の総合メディア「dancyu」の読者組織「dancyu食いしん坊倶楽部」を対象に、牛肉に対する嗜好を調査したレポート第一弾。見えてきたのは、国内産牛への高い支持と外国産牛への熱烈なファンの存在でした。

dancyu総合研究所は、dancyu食いしん坊倶楽部(以下、倶楽部)メンバーを対象に、牛肉に対する嗜好を調査しました。回答数は931人(男性457人、女性471人、どちらでもない3人)。調査は2024年4月26日~5月6日にかけて、インターネットを通じて実施しました。

価格の次に国内産か外国産かを気にしている

牛肉を購入する際に何を重視するか?重視することを上位5つまで挙げてもらった結果、最も多くの回答を集めたのは「価格(67.0%)」でした。値段の高い食材だけにこれは当然の結果でしょう。次に多くの人が重視していたのが国内産か外国産か。63.5%の人が、牛肉を選ぶ根拠として産地国を重視していました。3位以下の「赤身の多さ(36.4%)」「赤身肉の色合い(36.3%)」「牛の品種(27.%)」に水をあける高い回答率です。

牛肉を購入する際に重視する項目

国内産か外国産かを気にしたうえで、どちらを選んでいるかと言えば、圧倒的に国内産の牛肉です。和牛(日本固有の黒毛和種、褐毛和種、無角和種、日本短角種の4品種とそれらの交雑種)、国産牛(全肥育期間の半分以上を日本国内で肥育した牛。多くは乳用牛または乳用牛と黒毛和種の交雑牛)、外国産牛の3つについて、どれを最もよく購入しているかを聞いた質問では、もっとも頻繁に購入しているのは国産牛(42.1%)、次いで和牛(32.4%)。2番目に頻繁に購入しているのも同じ順位です。もっとも購入頻度が低い牛肉として半数以上の人が外国産牛(55.3%)を挙げています。国内で消費される牛肉の60%超が外国産牛であることを考えると、こと家庭で料理に使う牛肉については、国内産牛への支持の強さがうかがえます。

牛肉の購入頻度

好まれるのは旨味とコクがあって柔らかい牛肉

こうした人気差は、外国産牛よりも国内産牛肉の方が、倶楽部メンバーが牛肉に望むものを体現しているからと言えそうです。下の図にあるように、牛肉のおいしさを評価する際に重視する項目の上位に並ぶのは「肉の旨味」「柔らかさ」「ジューシーさ」「コクの深さ」「肉のきめ細かさ」でした。これらすべての項目で、和牛と国内産牛は外国産牛よりも「イメージに当てはまる」と答える人が多くなりました。

牛肉のおいしさを評価する際に重視する項目
牛肉別の特徴イメージ

興味深いことに、外国産牛を最も頻繁に購入している層を対象に和牛と外国産牛のイメージを聞いた質問でも、「旨味が強い」をはじめとする美味しさ評価のうえで重視する各項目で、和牛は外国産牛に圧勝しています。逆に外国産牛が和牛をイメージのうえで上回ったのは「後味がさっぱりしている」「肉の締まりが良い」という、重視する人が少ない項目でした。

外国産牛を最も頻繁に購入している層の和牛と外国産牛の特徴イメージ

これら3種類の牛肉はどのような料理をつくるときに選ばれているのでしょうか?牛肉を使ってもっともよく作る料理の上位10メニューは以下の通りになりました。

家庭でよく作る牛肉料理(上位10メニュー)

これらすべての料理について、最もよく使用されているのはやはり和牛か国産牛でした。すき焼きやしゃぶしゃぶのような霜降り肉が向いている料理で和牛が選ばれるのは当然と言えますが、ステーキやローストビーフのような塊肉を使う料理も和牛が好んで使われています。ハンバーグやカレー、和洋の煮物料理、牛丼には国産牛が最もよく使われており、ご馳走には和牛を奮発し、普段の料理には国産牛を使うという構図が見て取れます。

料理に使う牛肉の種類

海外赴任者・旅行者は外国産牛こそ旨味があると答える

美味しさの上では、和牛、国産牛、輸入牛の順で評価しているかに見える調査結果ですが、倶楽部メンバーの中には熱烈な外国産牛の支持派もいました。

「米国のステーキハウスで赤身中心のステーキを食べたときに、お肉がジューシーで驚いた。それまではステーキというと国産のほうが柔らかくて美味しい、という固定観念があったが、それほど柔らかくないお肉でも、噛みしめるうちにお肉の旨味を感じられることを知った」(40代・女性・神奈川)
「アメリカ在住時にアンガスビーフの美味しさを知り、肉を毎週、5年にわたり食べつづけた」(50代・女性・神奈川)
「アメリカ、フランスなどを旅行すると肉が日本より美味しくてびっくりする。肉食の歴史の差を感じる。肉だけで食事になる欧米と、コメに合わせる日本の差」(50代・男性・東京)

倶楽部メンバーの6%が自由意見欄で外国産牛の美味しさを訴えており、そのほとんど全員が海外への留学や赴任、旅行などの機会に現地で牛肉を食べた人たちでした。そこに共通するのは肉そのものの旨味への言及です。

「脂の甘みや口溶け感は、牛肉を食す際の幸せポイントのひとつだとは思うけれど、わたしはそれよりも肉がもつコク、旨味や歯ごたえを体感している時の方が、アドレナリンが大放出される」(40代・女性・東京)

回答者全体では、「和牛は旨味が強い」と思う人が51.1%、「外国産牛は旨味が強い」と思う人が14.2%でしたが、外国産牛支持派は、外国産牛こそ旨味が楽しめると考えています。

これはある意味正しいと言えるでしょう。A5等級の和牛の場合、サーロインの脂肪含有率は50%を超えることも珍しくなく、外国産牛の4~5倍にも上ります。逆に言えば、同じ量の牛肉であれば、外国産牛は和牛よりもたんぱく質である赤身の絶対量が多くなります。旨味成分であるアミノ酸はたんぱく質を構成する物質ですから、外国産牛肉は和牛よりも多くの旨味成分を持っていることになります。

調査全体からは、さっぱりはしているが旨味の少ない外国産牛というイメージが形成されていることがうかがえますが、海外で現地の牛肉を食べた人は旨味はむしろ外国産牛に軍配を上げています。外国産牛は、正しい情報の発信によって旨味やコクが少ないという“誤解”を覆す必要があると言えそうです。

【牛肉調査②】強まる牛肉の赤身志向。20歳以上の全ての世代で赤身肉派が霜降り肉派を上回る
【牛肉調査③】和牛の地域ブランドを重視するのは高所得者層と高齢層。短角牛・あか牛への高い関心

dancyu総合研究所では、dancyu食いしん坊倶楽部と共同した企業さま・自治体さま向けのイベント開催や調査、調査結果を基にしたコンサルティング、商品開発などの実施ができます。まずはお気軽にお問い合わせください。

【調査概要】
調査名:dancyu総合研究所「牛肉調査(2024年4-5月版)」
調査主体:dancyu総合研究所(株式会社プレジデント社)
調査方法:WEBアンケート方式
調査期間:2024年4月26日~5月6日
調査対象:「dancyu食いしん坊倶楽部」の10代〜70代以上の男女 931人(全国)