プレジデント調査室_vol.7 言葉で心が動いた経験は?
仕事や人生の重要テーマについて、PRESIDENT編集部が独自に行った調査からビジネスリーダーの偽らざる本音をあぶりだす「プレジデント調査室」。その調査結果について、PRESIDENT Business Portalにてお伝えします。第7回のテーマは「言葉の力」です。

人と人とのコミュニケーションに言葉は不可欠。本当に力のある言葉なら、その一言をかけられた人の思考を変え、行動を変えることができます。部下や同僚、上司の心を動かし、実際の行動を変える強い言葉を出すためには何が必要でしょうか。人の心を動かす難しさや、自分自身が心を動かされた経験について、聞いてみました。

プレジデント編集部では、2022年6~7月にPRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。1244名から回答を得ました。そのうち、ビジネスリーダー714名(経営者・役員282名、管理職432名)、一般社員344名に該当する1058名分を集計しました。

【図表1】上司に言われたことで、強く心に残っている言葉はありますか?

Q1では「上司に言われたことで、強く心に残っている言葉はありますか?」という質問をし、ビジネスリーダーのうち66.7%、一般社員では50.9%で、「強く心に残っている言葉がある」と回答しています。「強く心に残っている言葉がある」という回答は、ビジネスリーダーと一般社員の間では15.8ポイントの開きがあります。ビジネスリーダーになるような人物は、周囲から心を動かされるような言葉をかけてもらう機会が多いのかもしれません。

Q2では「最も印象に残っている言葉は、どんなときに誰に何と言われたのか、具体的に教えてください」と質問し、以下のような回答が寄せられました。

寄せられた声
●仕事で大きな失敗をしてその時の課長に報告したとき、「貴方は失敗の意味をわかっているし十分反省しているから、何も怒ったりしない」と一言だけだったことが深く印象に残っている(経営者・役員、50代)
●懇親会の時に上司の役員から、「良い仕事のご褒美は、お金でもポジションでもない。もっと面白い仕事だよ」と言われ大いに納得した(経営者・役員、60代)
●昇進の際に、直属の上司から「自分の力や努力だけで昇進したと思ってはいけない。一人の昇進にどれだけ社内の人が関わっているか、それをよく考えて、新しい立場にふさわしい振る舞いをしなさい」と言われた(管理職、40代)
●入社したてで上司から不条理で厳しい指導を受けたとき、8歳年上のバリバリの先輩から「悔しいだと。仕事で勝て。誰にも文句を言わせないくらい結果を出せ」。現在でも後輩育成時の自分の軸になっています(一般社員、40代)

場面はさまざまですが「上司」からの言葉が多く寄せられました。役職にかかわらず、自分が指導されてきた上司の言葉を、自分の軸や成長の糧にして大切にしている人が多いことがわかります。

【図表2】人に伝えることの難しさを感じることがありますか?

Q3では「人に伝えることの難しさを感じることがありますか?」という質問をしました。「難しさを感じることがある」と回答した人はビジネスリーダーで78.6%、一般社員で78.2%となり、どちらも7割強を占めています。役職に関係なく、人に伝えることは難しいと感じている人は多いようです。自分の伝えたいことを相手により正確に伝えるのが難しいと思った場面について、次の設問でより詳しくみていきます。

Q4では「人に伝える難しさを感じるのは、どんなときですか?」という質問をし、ビジネスパーソンが伝える難しさを感じた時を聞きました。以下のような回答が寄せられています。

寄せられた声
●此方の想いの熱と、受け手の認識レベルの違いを感じたとき(経営者・役員、60代)
●価値観、知識、経験が、大きく異なる人物を相手にするとき(経営者・役員、40代)
●仕事に対する精神が擦り合っていない部下に接するとき(管理職、50代)
●主張や口調が強いタイプの相手に対して、異なる意見を伝えるとき(管理職、40代)
●これまでの自分の伝え方が通じないとき(一般社員、30代以下)

寄せられた回答をみると「(自分自身の)想いや姿勢、考え方が違うとき」「今までの自分のやり方が通用しない」ときにビジネスパーソンは人に伝える難しさを感じるようです。また、回答のひとつである「これまでの自分の伝え方が通じないとき」は30代の一般社員から寄せられた回答でした。ビジネスパーソンは、若手時代にこういった課題を乗り越えることで、困難な事象にも柔軟に対応できるようになっていくのではないでしょうか。

Q5では、「『人を動かす言葉』『心を動かす言葉』を持つためには、どんな経験や力が必要だと思いますか」という質問をしました。以下のような回答が寄せられました。

寄せられた声
●単なる受け売りではなく、自身の経験を裏付けとした言葉が必要(経営者・役員、60代)
●本人が苦労した経験が必要。その苦労から他人に痛みを理解する(経営者・役員、50代)
●本やネットなどからの情報を常に入れられる心構え(管理職、60代)
●読書、考える力、リベラルアーツ(一般社員、30代)

管理職や一般社員からは「本やインターネットなどの情報」「読書」など外部からの情報を取り入れることが必要との回答が寄せられましたが、経営者・役員層は「経験」が必要と回答していたことは大変興味深い結果です。ベースとしてビジネス本などから得られる知識は当然として、その上に自分だけの経験や内省があってこそ、組織のトップに立つ人間になれるのかもしれません。

この回答はvol.2で取り上げた「ビジネスパーソンは何のために勉強している?」やvol.5で取り上げた「リーダーに『謙虚さ』は必要?」などにも通ずるところがあるのではないでしょうか。

*四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。
*調査&集計方法:2022年6~7月、PRESIDENT Online会員1244名から回答を得た。ビジネスリーダー714名(経営者・役員282名、管理職432名)と、「一般社員」344名に該当する1058名分を集計。
*構成:PRESIDENT編集部

『PRESIDENT』では、今後もこのような読者への独自調査を続け、ビジネスパーソンの本音をひもとく取り組みを続けてまいります。

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