目上の人の心を動かしたいなら、相手の性格を鋭く見抜き、戦略的に対応するのが早道。『超一流の雑談力』の著者・安田正さんが、5タイプ別の上司の見分け方と、雑談の効果的な使い方を伝授します。

コミュニケーションの難しさは、ライブ、つまり生ものであることにあります。話す相手はいつも同じではありません。時と場所をわきまえながら、相手のタイプを見極めていくことが重要です。

例えば、コミュニケーションの基本である「雑談」もそう。ビジネスの現場では、雑談を嫌がる人もいます。早く本題に入りたいのに、天気やニュースの話をダラダラされたらいら立ってしまいます。一方で、雑談が大好きな人もいて、趣味の話で盛り上がったり、服装や持ち物をほめることで、心を開いてくれるケースもあります。

いずれにせよ、大切なのは上司を冷静に観察し、キャラクターを把握することです。人は大まかに5つのタイプに分けることができ、話し方やリアクションなどから判断が可能です。

あとはタイプ別に攻めれば大丈夫。驚くほど成果が上がるはずです。

タイプ1:プライドの高いボス -結論は先に。相手を立ててテンポよく

▼「あなただけは特別」と自尊心をくすぐろう

イラスト=白根ゆたんぽ

大企業の役員や、中小企業の経営者に多くいるボスタイプ。頭がキレるので、会話の途中でも「で、何なの?」と答えをせかします。裏を返せば、興味のある話題にはどんどん食いつくので、相手にメリットのある話を積極的にすればあなたの評価は上がります。

ただし、話が長引くと不機嫌になるので、結論を先に伝えるのが鉄則。「見積もりはいくら?」と聞かれたら「◯円です」と、大まかでも構わないので金額を答えます。「その書類はいつできる?」と聞かれたら、日時を具体的に伝えましょう。「だいたいの見通しは……」「今月末くらいには……」といった曖昧な表現はNGです。

接し方としては、「おっしゃる通りです」と肯定から入りましょう。そして、「話のポイントは○個です」などと、最初に数字を伝えます。話す順番は自分本位でなく、常に相手が知りたい内容を優先させます。

相手を見下す態度を取ったり、攻撃的な言葉を使うのもボスタイプの特徴。成果にこだわり、勝つためには相手と徹底的に戦うこともいといません。一見すると近寄りがたい雰囲気ですが、親分肌なので、一度懐に入り込めば、強い味方になってくれます。「これは○○さんにしかできない相談ですが……」など、自尊心をくすぐる言葉が有効です。

また、彼らは礼儀も重視します。仕事で便宜を図ってもらったり、食事をごちそうになったりしたら、感謝を素早く伝えることを忘れずに。お礼のメール送信は、翌朝の始業1時間前までがリミットです。

▼6つ以上あてはまったらこのタイプ!
□ 黒やブルー系の精悍(せいかん)な感じの服
□ 規律を守った折り目正しい服装
□ 相手の顔を直視する
□ 腕を組み、相手を見下すような態度
□ テンポの速い話し方
□ 挨拶の後、すぐ用件に入ろうとする
□ 結論を早く聞きたがる
□ 話が長引くと不機嫌になる
□ 成果(勝ち負け)にこだわる
□ 攻撃的・批判的な言葉をよく使う

安田 正
株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役。早稲田大学理工学術院非常勤講師。ロジカルコミュニケーション、プレゼンテーション、対人対応コーチング、交渉などの領域で講師、コンサルタントとして活躍中。30万部超のベストセラー『超一流の雑談力』(文響社)など、著書も多数。

木下真之=構成 白根ゆたんぽ=イラスト