連合が発表した「マタハラに関する意識調査」によると、「マタハラ」という言葉の認知率は93.6%と非常に高い。また、実際にマタハラの被害に合った人も28.6%いることが分かった。
連合(日本労働組合総連合会)は8月27日、「マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」の結果を発表した。この調査は2013年に始まったもので、今回が3回目となる。
調査の対象は、過去5年以内の在職時に妊娠経験がある20~40代の女性654人。働く女性の実態に合わせて、回答者の約4割(261人)を正社員、約6割(393人)を非正規社員の女性としている。年齢分布は30~34歳が最も多く32.1%、次いで25~29歳(26.3%)、35~39歳(25.2%)、40~44歳(9.6%)、20~24歳(5.2%)……と続いている。
「女性が働くことと子育て」について聞いたところ、「働きながら子育てをしたい」と回答した女性は88.3%にのぼり、「仕事をやめて子育てをしたい」7.0%を大きく引き離した。また、「マタハラ(マタニティハラスメント)」という言葉についても尋ねたところ、認知している人は93.6%。実際に、自分自身がマタハラを経験した人は28.6%いた。雇用形態別に見ると、非正規社員に比べ正社員のほうがマタハラの被害に多く遭っている。以下、詳しく見ていこう。
仕事をしながら妊娠――「不安を感じた」人が過半数
「仕事をしながら妊娠が分かったときの心境」について尋ねたところ、「嬉しかったが、同じくらい不安を感じた」は40.4%、「嬉しかったが、それ以上に不安を感じた」は9.2%、「不安しか感じなかった」が6.3%。合わせて55.9%が不安を感じており、「嬉しくて素直に喜べた」44.2%を上回る。
具体的な不安の対象といえるのが、マタハラや、保育園などの確保についての問題だ。「マタハラ」という言葉は回答者の93.6%が知っており、2013年の第1回調査結果の6.1%から大幅に上昇。認知度はこの3年で飛躍的に上がっていることが分かる。
マタハラ経験者は28.6%
自分自身、マタハラを経験したという人は28.6%。雇用形態別に見ると、正規が34.9%、非正規が24.4%となっている。具体的なマタハラの内容としては「妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導などをされた」が最も多く、他には「妊娠を相談できる職場文化がなかった」「妊娠中や産休明けなどに心無い言葉を言われた」「妊娠中・産休明けに残業や重労働などを強いられた」「妊娠・出産がきっかけで望まない異動をさせられた」……などが続く。
マタハラが起こる原因は何だと思うか、という問いもある。最も多かったのは「男性社員の妊娠・出産への理解不足、協力不足」で(67.3%)、以下「職場の定常的な業務過多、人員不足」「女性社員の妊娠・出産への理解不足、協力不足」「フォローする周囲の社員への会社の評価制度整備や人員増員などのケア不足」などが続く。
マタハラが起こらないようにするための対策についても聞いている。「休業・復帰しやすくなる制度や会社にとっての負担軽減、または制度に関する会社の理解促進」「育児に携わった女性のマネジメント・経営陣への登用(理解者を増やす)」「行政による保育園や学童保育制度の改革」「職場での適切な人員補充」「育児に携わった男性のマネジメント・経営陣への登用(理解者を増やす)」などの回答が並ぶ。
出産退職希望者はすでに少数派? ――「働きながら子育てをしたい」88.3%
出産のタイミングで会社を辞めて家庭に入る女性は多いが、その意識も大きく変わりつつあるようだ。「女性が働くことと子育て」という問いでは、「自分の希望として働きながら子育てをしたいと思う」と回答した人が最も多く51.4%、次の「経済的な理由で働きながら子育てをしなければいけないと思う」(36.9%)と合わせると、実に88.3%が「働きながら子育てをしたい」と答えている。「仕事はやめて子育てをしたいと思う」は7.0%と1割以下だった。
実際に働きながら子どもを育てるためには、“子どもを預ける環境“が必要になる。「保育園や学童保育など子どもを預ける環境が仕事選びやキャリア形成に影響した/すると思いますか?」という質問では、「影響がある」と答えた人が93.4%。具体的な影響としては「時短制度など働き方に変化があった」(50.2%)、「仕事を辞めざるをえなかった」(32.6%)、「雇用形態を変えざるをえなかった」(30.1%)がトップ3となった。
保育園の入園審査条件についても尋ねている。現状では母親の労働時間や月の勤務日数などの点数で評価されるため、パートなどフルタイム勤務でない人は入園に不利になりやすいが、これについて「保育園がなければ働けないので、フルタイムの勤務でなくても入園に不利にならないようにしたほうが望ましい/するべき」と答えた人は69.9%。「労働時間の長さなどで入園審査の点数に差が付くのは仕方ない」20.3%を大きく上回った。
また、埼玉県所沢市在住の女性が2人目の育休をとると1人目の保育園退園を迫られたことを訴えたことについて、「2人目の育休で退園ルール」があることは「2人目を産むのを躊躇するきっかけになると思う」と答えた人は59.9%。「2人目育休中の退園をさせるならば、必ず戻れるなどのルールをきちんと作るべき」「保育園の定員を増やしてほしい」「2人目を産むにあたり職場を辞めるきっかけになると思う」といった意見も多かった。夫婦2人から生まれる子どもが2人以上でなければ少子化は止められないが、親は2人以上欲しいと思っていても現実にはひとりっ子、という家庭は多い。少子化対策という観点ではこうした保育園のルールにも目配りが必要と言えそうだ。
「パートや契約社員でも育休は取れる」ことが知られていない
産休・育休は正社員だけの権利だと思われがちだ。しかし実は、パートや契約社員など、有期契約で働く労働者でも、ある条件をクリアした場合には育休が取得できる。このことを知っているか尋ねたところ、75.3%が「知らない」と回答していた。
この対象となる非正規労働者は「雇用保険に加入し、育休前の2年間で1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上ある」場合で、さらに「育休開始時において同じ会社に1年以上雇用されており、さらに子が1歳の誕生日以降も引き続き雇用が見込まれ、子の2歳の誕生日の前々日までに雇用契約が満了し、更新されないことが申し出時点で明らかになっていない場合」という条件をクリアしていなくてはならない。この条件について尋ねたところ、「不公平。有期契約でも育休を取れるように条件を緩めるべき」(41.1%)、「現実的な条件ではない」(29.7%)を合わせると70.7%が条件の緩和を求めており、「有期契約であれば仕方ない」28.3%を大きく上回った。
実際に、どれくらいの人が育休を取れているのだろうか。「あなたは育休を取得できましたか?」と尋ねたところ、39.6%は育休を希望したが取れなかった、と回答している。
非正規社員の女性の働き方にも目を向けてほしい
最近は「女性活用」の議論が活発になってきているが、それについてどう感じているか、ということも質問している。最も多かったのは「女性だけに働くことと家事・育児の両立を求める風潮に疑問」で55.7%。他にも「現場の声が届いていない、机上の空論」「非正規社員の女性の働き方にも目を向けてほしい」「制度だけでなく現場の理解が高まればいいと思う」「女性だけでなく、男性にもっと当事者意識を持ってほしい」といった切実な声はいずれも約4割上がっていた。
実際に、働いている女性がマタハラや産休・育休に関する職場のトラブルにあった場合はどうしたら良いのだろうか? 連合ではこうした問題の解決策の一つとして、9月17日に「マタハラに負けない!! 産休・育休なんでも労働相談」と題して、電話相談を受け付ける。連合は普段からこうした労働問題に関する相談を受け付けているが、相談者の気持ちに寄り添えるよう、特にこの日は産休・育休を経験した女性の弁護士、社労士、連合本部役職員が対応するという。「妊娠が分かり不安に感じた」という人は、こうした窓口を利用してみてはいかがだろうか。
日時:9月17日(木)10:00~20:00
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