2015年8月中にも国会で、「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が成立する見通しです。女性活躍推進の機運が盛り上がる中、女性のキャリア支援や企業向けコンサルティングを行ってきた清水レナさんが2015年6月、企業の中での女性活躍推進の進め方について述べた『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』を刊行しました。

株式会社CHANCE for ONE代表取締役社長 清水レナさん

「社会のあらゆる分野において、2030年までに、指導的地位に女性が占める割合を30%にする」――。2013年、政府の成長戦略に、企業の管理職に占める女性の割合を増やすという目標が掲げられました。ここ1年あまりで潮目が大きく変わり、企業が本気で女性活躍推進に取り組み始めています。清水さんは、「女性活躍推進は、企業の人材不足の問題を解決し、企業競争力を高めるためのもの。『法律ができたから(仕方なく)やろう』というのではなく、積極的、自発的に取り組んでほしいと考えて、この本を書きました」と話します。

ターゲットは40~50代の男性管理職

女性活躍推進の中でも、特にハードルが高く、企業の戸惑いが大きいのが、「管理職に占める女性の割合を増やす」という課題です。この本は特に、この課題をクリアするための具体的な実践方法に焦点を当てています。

日本企業が女性管理職を増やすうえで、大きな壁となっているものの1つは、約90%を男性が占めている管理職の意識だと清水さんは指摘します。「管理職に必要な経験を積むための機会は、育成する立場にある直属の管理職の力添えなしには実現できません。つまり、彼らの意識改革なしに女性の活躍は実現しないと考えて、40~50代の男性管理職を読者ターゲットに定めました」

進む「女性活躍推進」への理解

男性管理職からは、本に対して好意的な反応が返ってきているそうです。「女性活躍推進は、女性に優しくする、女性のための施策だと思っていたが、実際は、企業のため、国のための生き残り施策だということが分かった」「女性活躍推進は、男性と同様の働き方をして頑張る女性を、男性と同様に扱う“男女平等”を意味していると思っていたが、そうではないことが分かった」などです。また、女性活躍推進の施策を担当する人事担当者からは、「これまでも、女性活躍推進の現状や課題について書かれている本はあったが、先進的な取り組みを行う企業ばかりが取り上げられていて、参考にしようがなかった。この本のケーススタディは、普通の企業に当てはまるものばかりで、すぐまねできそうだ」などの声が寄せられています。

『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』(清水レナ著 ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)

男性管理職を対象としていますが、「思っていた以上に、女性にも読まれている」と清水さんは言います。中でも、1章、2章に書かれている、「これまで企業における女性活躍推進が難しかった理由」、「なぜ今女性活躍推進が企業にとって、国にとって必要なのか」については、「当の女性も理解できていなかったようで、『ようやく理解できた』という感想をたくさんいただいています」と話します。

昇進意欲と時間的制約による垣根

清水さんは、女性管理職や女性経営者から、女性部下の育成に悩む声をよく聞くといいます。そこで例に挙げるのが昇進意欲の有無と時間的制約の有無の分布状況を知るためのM/Tマトリクス(Motivation for promotion/Time constraint Matrix)です。「M/Tマトリクスは、横軸に昇進に対する意欲の度合いの高低を、縦軸には家事労働や育児などの時間的な制約条件の有無をとった表ですが、働き続けることの難易度や管理職になるための阻害要因は、その人がどのセグメントに属しているかによって異なってきます。女性管理職や女性経営者は、昇進意欲が高く、マトリクスで言うと左側の象限にいて、苦労しながら頑張ってきた人が多い。一方、今の女性は、右側の象限の人も多いので、自分と違う価値観を持った人たちにどう接していいのか分からないのかも知れませんね」と説明します。

昇進に対する意欲が高い人のうち、時間的な制約がない人は左上の「高(無)」、時間的な制約がある人は左下の「高(有)」、また時間的な制約はないが意欲が低い人は右上の「低(無)」、時間的な制約があり意欲も低い人は右下の「低(無)」のセグメントに属する。

管理職や経営者から寄せられる声に対し、清水さんは次のようにアドバイスをします。「まずは女性部下に、正しい知識や未来予測を持ってもらうこと。書籍でも、女性活躍推進とは何かについて、マクロ経済的な視点で述べています。人口減少や国の財政状況などの未来予測を知ると、そもそも女性が『長く活躍しない、働かない』という選択をすることが、現実的でないことに気付くはず。それだけでも、スイッチが入る人は多いと思います」

また、今後は女性を分けていた、“働き方の垣根”が取り払われることを知ってほしいと話します。「マトリクスの左右にも上下にも、意欲ややる気次第で柔軟に動くことができるようになりつつある。自分で選び取ることができるようになっているんです」。しかし同時にそれは、女性にとって厳しいことでもあります。「女性活躍推進は、女性に“優しい”制度を充実させるだけのものではありません。女性も、管理職になるために必要な経験や機会が与えられるようになり、鍛えられる。男性同様に“厳しさ”も課せられるようになるのです」

個として垣根を越えた働き方を

清水さんは著書の中でも、「これからの企業は、『個』を重視した人材マネジメント力が必要」と強調しています。ところが、女性管理職・経営者と話していると、「女性部下は扱いにくい」「女性はいつも○○する」など、「女性」でひとくくりにした発言が目立つとか。「自分もかつては、そう言われて悔しい思い、イヤな思いをしたことがあると思うのですが……」と苦笑いします。

「女性は、仕事と家庭のバランスについての考え方や仕事への意欲も千差万別で、個人差が大きい。また、育児や親の介護を担う男性も増えています。仕事への適正や能力は、『女性』『男性』とひとくくりで語れるほど単純ではなく、個人差の方が大きい。マネジメントする側は一人ひとりを個別で見ていくスキルが必要です」と話しています。

『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』著者・清水レナさんに会える!
セミナー開催決定


日本政府主催・⼥性が輝く社会に向けた国際シンポジウム
「シャイン・ウィークス」公式サイドイベント

PRESIDENT WOMAN Online×Discover
「女性活躍推進法、まったなし! 輝く会社のための女性部下育成のススメ」


■講師:清水レナ
■開催日時:2015年9月16日(水)19:00~21:00(18:30開場)
■参加費:3000円(ドリンク付き)
■定員:80名
■会場:ディスカヴァー・トゥエンティワン
(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-16-1 平河町森タワー 11F)

「女性活躍推進法」の成立を目前に、その分野におけるコンサルタントの第一人者、清水レナさんが豊富なケーススタディを基にして企業が取るべき行動と「女性部下の育て方」のポイントを紹介。社内制度や風土づくり、採用の仕方まで具体的に説明します。
女性が管理職になるために最も必要なものは何か? 女性部下育成・昇進意欲の向上に向けて組織・上司が意識すべき点とは? 人事担当者、管理職から、キャリアアップを目指す女性まで、幅広く役立つ内容です。

【このような方におすすめします】
□各企業の女性活躍推進室やダイバーシティ推進室の室長および担当者
□既に管理職になっている、もしくは管理職候補となっている女性
□女性部下を1人でも持つ上司の皆さま

詳細、お申し込みは、下記のディスカヴァー・トゥエンティワンwebサイト内「セミナー・イベント」のご案内をご覧ください。
http://www.d21.co.jp/seminars/20150916
清水レナ(しみず・れな)
女性活躍推進コンサルタント。株式会社CHANCE for ONE代表取締役社長。1973年生まれ。立命館大学在学中に「女子就職問題研究プロジェクト(現・キャリアデザインプロジェクト)」を立ち上げ。4年時には女子大生の就職奮戦記を共著にて出版。現在は法人向けに、女性活躍推進に関するサービスを提供。立命館大学や共立女子大学などでは講師を務める。著書に『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)がある。