共感能力の高い女性がタフになれれば優れたリーダーになれる

――どういう女性を評価し、登用したいと思いますか。また、リーダーシップに男女の違いはありますか。

日産自動車取締役社長・最高経営責任者 カルロス・ゴーンさん

【ゴーン】男性とまったく同じです。女性だから甘く評価するのは避けなければなりません。ただし男女を同様に評価するなら同じように教育研修の機会を与え、仕事のチャンスを与えるべきです。そうすれば男女関係なく実績は出ます。男女に関係なく日産の品質、日産のお客様、日産の実績にどれだけ貢献しているかが評価の基準です。もちろん同じ貢献に対しては給与や待遇も同じにする必要があります。

また、男女でリーダーの条件に違いがあるとは思いません。ただ、リーダーシップの表現の仕方が少し違うのではないでしょうか。女性のほうが共感する能力が高いといわれています。ビジネスにおいては共感能力は極めて重要な力です。そして、女性はもっとタフになれると思います。共感能力が高く、さらにタフになれば、もっと優れたリーダーシップの発揮につながるのではないでしょうか。

――ジェンダー・ダイバーシティは男性の問題でもあると思うのですが、ゴーンさんのフェアな哲学を日産自動車の男性管理職も共有していますか。

【ゴーン】社員全員が同じ意見、価値観である必要はありません。そのこと自体、非現実的です。ダイバーシティはビジネスの利益のために進めているのです。社会的な価値のためにやっているのではありません。

日産自動車の実績を支えるいろいろな取り組みがあり、そのひとつがジェンダー・ダイバーシティです。みんなが業績を上げたいと思い、そのためにこそジェンダー・ダイバーシティに力を入れるのです。私も会社では「業績に貢献する」という言い方をしています。「私の信念だ」「正しいから行う」と言ったことは一度もありません。私は正しいことだと信じていますが、それは個人的な見解です。ビジネスのプロとしてジェンダー・ダイバーシティを評価することが大切です。

――自動運転車など、将来の夢のクルマはどうなっていくでしょうか。

【ゴーン】現時点で、将来のクルマにはゼロ・エミッション、コネクテッド、自動運転の3つの要素があります。環境意識が高まっているので、価格が同じであればゼロ・エミッションのクルマが購入されます。特に若い世代はそうです。いまゼロ・エミッションといえば電気自動車です。コネクテッドカーは、オフィスや自宅ではコンピュータがあり、インターネットに接続されていて、いろいろな情報にアクセスできるのにクルマの中ではせいぜい電話のハンズフリー程度です。車中でもコネクテッドの環境が求められています。

われわれのいう自動運転は、自動といってもまったく運転しないクルマではありません。自分で運転する時間と自動運転の時間をコントロールするということです。将来的には、映画を見たり新聞を読んだり、子どもの世話をする間は自動運転に任せ、運転したくなったら自分で操縦するというようなことが可能となるかもしれません。こういった夢のクルマの開発にも、女性技術者の眼が生かされると思います。

カルロス・ゴーン
日産自動車取締役社長・最高経営責任者。1954年、ブラジル生まれ。78年、仏・国立高等学校卒業後、ミシュラン入社。ブラジルミシュラン社長、北米ミシュランの会長、CEOなどを経て96年ルノー入社。99年日産COO、2000年より社長に就任、01年より会長兼CEO。