楽しそうに仕事をする開成教員がロールモデル
本校では私のような研究者をはじめ、小説家、俳人、芸術家などのさまざまな専門家が教員として働いています。彼らがそうした専門性を発揮して、生徒の興味を引き出せるように、業務に縛られず自由な時間を多く確保するため、毎日の早朝出勤を求めていません。
ちなみに、本校の教員はみんなとても仲がよく、楽しそうに仕事をしており、離職率がすごく低い(笑)。生徒たちは、そういう大人を身近で見ているので、大人になること、仕事に就くことを楽しみにするようになります。これも開成のよき伝統の一つです。
先ほど、後に海外大学に進学することになる中学生たちによって留学支援制度がつくられたという話をしましたが、開成の生徒たちは「こんなことがしたい」「こんなことに興味がある」ということを実に積極的に発信してきます。そしてそれを教員が受け止め、実現に向けてバックアップをしていくんですね。
たとえば本校の学食は「学食ネット」というスマホのアプリから注文ができ、さらにPayPayで決済することができます。昨年9月から導入されたものですが、これはコンピュータ部に所属していた高3の秋山弘幸くんと高2の周詩喬くんの発案で生まれたものです。
それまでの学食は、食券の購入に長蛇の列ができ、食事の時間が十分に取れない生徒、学食での食事そのものをあきらめる生徒が少なからずいたのです。このことを問題視した2人が、アンケート調査とプログラム開発を行い、学校事務局や食堂運営会社、さらにはPayPayとも交渉して、実現にこぎつけました。
こうした生徒たちが発案した自主研究やプロジェクトを支援する「ペン剣基金」というものがあります。OBの寄付によって作られた基金で、運用利子を生徒の活動の支援に活用しています。生徒は自分のプランをプレゼンして、認められれば研究内容に応じて、数万円から数十万円の研究予算がつきます。ちなみに生徒だけでなく、教員の研究活動にも適用されます。例年、10件ほどの応募があり、8件ほどが採択されていますので、企画内容もなかなかに充実しているようですね。
こうした制度のバックアップも生徒の探究心に火をつけているようで、彼らはいつも「こういうアイデアはどうだろう?」「こういう問題があるが、誰か解決のヒントを知らないか?」など、仲間同士で話し合っています。同好の士が数人集まれば同好会を発足させます。そして教員のところにやってきて「顧問をやってください」と。1人の教員がどうしても時間の工面ができずに断ると、「そういうことならオレがやってやろう」という教員が必ず現れます。
生徒たちが本校で身に付けたさまざまな知識を武器に、いずれは海外に飛び立って、世界を舞台に活躍する、国際的なリーダーになってくれること。これが校長として、そして同じ開成の先輩としての、私の切なる願いです。
※本稿は、『プレジデントFamily2025夏号』の一部を再編集したものです。


