1952年、大阪市で電気製品の商社として創業し、現在は自社製品を含め電子機器・部品から製造・検査装置までを幅広く取り扱うダイトロン。エレクトロニクス業界の発展と歩調を合わせる形で成長してきた同社の最大の強み、それは商社機能とメーカー機能を併せ持つ“製販融合”の事業スタイルだ。グローバルでビジネスを展開し、連結売上高1000億円も視野に入る中、いかなる戦略で持続的な成長を実現していくのか――。土屋伸介社長に聞いた。

顧客ニーズが高まるソフトウエア事業にも注力

――現在の事業環境や今後の需要動向をどのように見ていますか。

土屋伸介
土屋伸介(つちや・しんすけ)
ダイトロン株式会社 代表取締役社長
1984年立命館大学産業社会学部を卒業し、大都商事(現ダイトロン)に入社。DAITRON INC. Presidentを務めた後、ダイトロンで営業副本部長、機械部門長、海外事業本部長などを歴任。2019年常務執行役員に就任。21年より現職。

【土屋】今やエレクトロニクス技術はあらゆる産業にとって不可欠で、例えば最近は自動化や省力化関連の相談なども増えています。もちろんお客さまの業種ごとに需要の波はありますが、当社が提供する製品や装置は半導体関連、産業機械、オートモーティブ、医療、航空の他、多岐にわたる分野で使われており、ダイトロン全体としては需要の波、景気変動の影響を受けづらいのが特徴です。AIや通信、データ活用などの進展に伴い、当社が関わる市場は今後も着実に拡大していくと見ています。

――そうした中で“製販融合”というダイトロンの強みはどう生きてきますか。

【土屋】技術商社としてマーケティング力を備え、メーカーとして設計や開発、製造の技術力も有していることで、ニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応できる。これが当社の強みです。国内外のお客さまは約5000社に及び、一方仕入れ先も2000社ほど。取引先との日々のやりとりの中で最新の技術動向やトレンドを敏感に感じ取り、満たされていないニーズがあれば自社で開発していきます。他社製品と当社オリジナル製品からなる豊富なラインアップによって、ニッチな要望にも的確に応えられる点をお客さまから評価していただいています。

――近年の顧客ニーズの変化にはどのようなものがありますか。

【土屋】一つにはソフトウエアへの関心が高まっています。電子製品や各種製造・検査装置の機能を高めたり、使いやすくするにはソフトが重要で、「その部分もダイトロンで担えないか」とのお話を多く頂くようになりました。そこで現在、ソフト開発にも力を注ぎ、ハードとソフトを組み合わせて展開できる体制を整備しています。これによって、お客さまへの提案の幅が格段に広がり、製品の付加価値も高まっている。結果的に当社の収益性も向上しています。

――その他、ダイトロンとして戦略的に取り組んでいることはありますか。

【土屋】さらなる業務効率化を目的としたDX推進プロジェクトがあります。社内には営業、購買、製造など各部門の多様なデータやノウハウが蓄積されているため、これらを整理、統合、見える化して、社員誰もが活用できるようにしていきたい。例えばある製品分野の知見が別の分野でも使えるということがあり、情報共有が進めば業務のスピードも質も向上します。DXによって社内全体のデータの連携、共有を促進することが、製販融合という優位性を強化することにもなると考えています。

連結売上高1000億円を一つのステップに

――長期ビジョン「2030 VISION」では、定量目標として「連結売上高1000億円を超え、さらなる拡大に挑戦」を掲げています。どのような思いが込められていますか。

【土屋】1000億という数字を早期に実現し、それを一時的なものでなく着実に成長させていく。そうした思いを強く持っています。

達成するための鍵の一つは海外事業の強化です。現在20%強の海外売上高比率をまず30%台に乗せ、将来的には50%程度としていきたい。国内と海外を区分けすることなく、あらゆる物事をまさにグローバルな視点で発想していくことを、現在全社的なテーマとしています。

広がりを見せる ダイトロンの関連市場

併せて成長戦略として重視しているのが新規事業の拡大です。現状、データセンター向けの無停電電源装置(UPS)事業が順調に業績を伸ばしています。これに加え、先ほどお話ししたソフトウエア開発も新規事業の柱として確立し、持続的な成長の原動力にしていきたい考えです。

ダイトロンのオリジナル製品・装置の例

自由に提案できる環境がたゆまぬ挑戦の支えに

――ビジョン、目標を達成するために、経営トップとして組織運営でどのようなことを大事にしていますか。

【土屋】「提案すること自体が価値である」。そうした意識を社内に浸透させていくことが私の一つの役割だと思っています。ご存じのとおり、エレクトロニクス業界は変化のスピードが速く、競争力を維持するには常に挑戦していくことが求められています。技術開発やオリジナル製品開発においてはもちろん、それは調達や営業、マーケティングなどすべての分野に共通します。失敗を恐れずに誰もが自由に意見を言える環境は、挑戦を続けていくことの支えになりますから、経営トップとして提案することの意義、価値を引き続き発信していきたいと思っています。

――最後に改めて今後の抱負、目指す方向性をお聞かせください。

【土屋】ダイトロングループは自らを「技術立社」と定義しています。「全社員がそれぞれの立場や役割に応じた技術力を持ち、業務においてその力を発揮する会社」との意味です。まさにそうした立ち位置をいっそう確かなものとすることが今後の方向性であり、それが多くのお客さま、仕入れ先からなる強固なパートナー基盤を生かすことにもつながると考えています。

70年を超える歩みの中で培ってきた既存事業をさらに進化させ、同時に市場で得た情報を基に社員が新たなアイデアを発想していく。そうした取り組みを通じて、グローバルでのさらなる躍進を目指すダイトロングループの今後にぜひご注目ください。

中部工場
国内の基幹工場である「中部工場」(愛知県一宮市)は、半導体加工装置、洗浄装置、薄板化関連装置の製造などを担っている。