一見、対照的に映る「運動」と「休息」。しかし、必ずしも相反することではないのだ。その理由は、帝京平成大学ライフ学部准教授の藤牧利昭先生が勧める「アクティブ・レスト」にある。
「疲労」の正体は不明
しかしそれは重要なサイン
政府は日本に住む一人ひとりの健康を高める施策として「健康日本21(第2次)」を展開中だ。生活習慣病の予防や心の健康を保つことなどを主眼に、次のような柱をすえている。「栄養・食生活」では、偏った栄養摂取の改善などが大切。また「運動」などすべての身体活動は、心身の健康にプラスとなる。あわせて「休養」も、心身の疲労回復と充実した人生のために欠かせない。
なかでもビジネスパーソンの健康を考えたとき、疲労回復は重要な課題といえるだろう。1998年当時の国による調査結果だが、日本人の約60%が疲労感を自覚し、うち約37%は半年以上も慢性的に疲れを引きずっていた。その後の経済・雇用をはじめ社会情勢の厳しさを考えれば、当時の数字が大きく好転したとは想像しにくい。
では、そもそも疲労とは何なのか。スポーツ生理学を専門とし、医学博士でもある藤牧利昭先生による説明はこうだ。
「実は、いまだに疲労の正体はよく分かっていません。脳も含めた体の中で、疲労との因果関係をもつ原因物質は見つかっていないのです」
ちなみによく耳にするのが、運動をすると「乳酸がたまる」という話。だが、乳酸が疲労を引き起こすわけではなく、しかも乳酸値が高くなるのは、よほど激しい運動をしたときだ。
「間違いなく言えるのは、『疲労感とは我々を守るサイン』ということ。倒れる前に、休養が必要だと教えてくれているのです。ビジネスパーソンの場合ですと、気になるのは疲労のアンバランスですね。脳や目ばかりを酷使し、筋肉や骨はあまり使わない。体より心の疲れを強く感じている人も多いのではないかと思います。ただ心身は相関していて、心の疲れは体に影響を及ぼす。その逆もしかりです」