事業形態や働き方に
合わせ施策を工夫する

──具体的にどのようなやり方があるのでしょうか?

中島 例えば「社宅費」「ランチ代」「健康管理費」「通勤費」「出張費」などを給与とは別の形で支払うことで、節税になる場合があります。案外このことをご存じない経営者の方は多いですね。

大まかにいって給与の35%が、税金(所得税・住民税)や社会保険料として徴収されます。なので、その対象となる所得とは別立てでお金を支給することで、社員の手取り額が増える可能性もある。また社会保険料が減ることで、会社側の負担が軽減されるケースもあります。

一般的に、ランチ代や住居費、健康管理のための費用などは、社員が自分の給与の中から支払うもの。それを会社が別途支給すれば、社員の健康や生活に対する“経営者の思い”が伝わります。ここが一番のポイントです。私は全国各地で講演・セミナーを行っていますが、例えばお勧めしているのが、ワクチンなど「予防接種」の補助。昨今何かと注目されていますし、「社員の健康を考えている」というメッセージも伝わる。社員が出勤停止となるリスクなどを考えると、それほど高い出費ではないと思います。

──「社宅費」や「ランチ代」についてはいかがですか?

中島 「社宅制度」については、中小企業で導入されるケースも増えています。会社が大家と個別に賃貸契約を結んで、それを社宅として貸与する。社員にとっては家賃負担が減るわけですから嬉しいし、会社との一体感も深まります。もっとも節税のためには、法令に則った社宅使用料を、社員から徴収する必要があります。給与額のシミュレーションを行い、逆に手取りが増えることを説明し、納得してもらうことが大切ですね。

一方「ランチ代」は、大手IT企業などが社員食堂でのランチ無料化を打ち出し、人気を集めています。しかし中小企業が社員食堂を設置するのはなかなか難しい。そこで検討したいのが、社員のランチ代を会社が一部負担するというやり方です。これだと会社負担分と同額以上を社員から徴収することで、節税につながる場合があります。やり方しだいで社員の実質的な手取り額も増やすことも可能。ある企業などは、“野菜多めのランチ”と食事補助の条件をつけることで、健康への配慮を形にしています。

このほか、出張した社員に「日当」を払う、自転車通勤にも「通勤費」を支給する、あるいは資格取得や研修の費用を負担するなど、その会社の事業形態や働き方に合わせ、いろいろな施策が考えられます。

他社と差別化し
オリジナリティを出す

──近年、「福利厚生代行サービス」を提供する企業も増えています。その選び方、付き合い方などでアドバイスがあればお願いします。

中島 大手企業へのカフェテリアプランの広がりなどもあり、福利厚生のアウトソーシングが進んでいます。確かに「コストの削減」や「サービスの拡充」などメリットは多い。しかし中小企業が活用する場合に工夫してほしいのは、やはりどうやって「経営サイドの“思い”を伝えるか」という点です。いかに「自社ならではの制度」として形にしていくかが大切になります。

サービス会社のなかには、特定分野で実績を上げている会社もあります。スポーツ活動や旅行、社宅、食事代など、自社の会社の理念や方向性とうまく合致したサービスを選択することですね。せっかく導入した福利厚生制度なのに、他社との差別化が見えないと、効果も薄れます。自社のポリシーをしっかりと打ち出し、それを社員にていねいに伝える。中小企業への支援制度や関連法規を活用するなど、使えるツールはいろいろあります。ある程度、手間をかける必要があると思いますが、社員と会社の成長、発展のために、ぜひチャレンジしてみてください。