メディアへの違和感

原田英彦前監督は京都市出身の64歳。平安高校時代は外野手として活躍。日本新薬に進み主将として都市対抗野球にも出場。引退後の1993年に母校の監督に就任。97年夏には準優勝、2014年春には優勝するなど、一時期低迷していた平安高校を再び強豪校へと復活させた。今、プロで活躍している平安高校出身選手すべての「恩師」になる。

今回の事件に関して、学校側は事件発覚とともにこれを公表し、学校として原田前監督の懲戒処分の手続きを開始した。迅速であり、適切だったといえよう。

原田前監督が監督を退任、学校を退職したこともあり、事態はこれで収束したといえるが、筆者は疑問の念を禁じ得ない。それはメディアの「反応」である。

例えば、日刊スポーツの3月5日配信記事だ。

「野球を愛し、母校に深い思い入れを持つ選手をどうすれば育てられるのかを常に考えていた指導者が、行き過ぎた指導が原因で、愛してやまないHEIANのユニホームを志半ばで脱いだ」

AERA dot.(3月8日配信)では、「プロ野球の世界でプレーしたOB」の声として「今回の事件の詳細が分からないので、その点はコメントできませんが」と前置きしつつ、「私も、何度も頭をはたかれたことがありましたよ。時代が違うかもしれないですけど、そのときは自分に非があるなと思ったので納得できたし、周りの選手も同じ感覚だったと思います」との声を紹介している。

学校内の暴力はなぜか黙認される

サンケイスポーツの記者コラム(3月9日配信)は「原田氏の人柄と熱血指導に理解を示し、今春、部員になる新1年生は、どんな思いなのか。甲子園への近道だと思ったはず。これからの人生に多大な影響を与える恩師と3年間を過ごせない。学校側が指揮を任せる新監督に、まずは身を委ねるしかない」と記している。

原田前監督に対して同情的な記事が多い。

ダグアウトのベンチに立て掛けてあるバットと、ベンチの上にはミットとボール
写真=iStock.com/33ft
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また、原田前監督の退任を発表した報道対応でも山脇護校長は「(原田監督は)“生徒をなんとか活躍させてあげたい思いからだった。申し訳ない”と話している」と語っている。

たとえ話だが、駅頭で60代半ばの一般男性が高校生を「手のひらやノートで頭部や肩、のどのあたりを叩いた」とすれば、周囲がすぐに警察に通報するだろう。そうなれば叩いた男性は、暴行罪もしくは相手がケガをしたら傷害罪で訴えられる可能性がある。

しかし「学校」「野球部」という閉鎖空間で、特定の人物が暴力をふるった場合には、学校は警察に通報することはないし、事態が発覚しても、メディアは同情的な論調で報じるのだ。日本は法治国家であり法の下の平等が保証されているはずだ。

日本では親や教育者が、子供もしくは生徒に教育的目的で暴力をふるうことを体罰と称してきた。暴力は刑事罰の対象であり当然、違法行為だが、ひとたび体罰となれば、状況次第では容認される。学校で教師に暴力をふるわれても、親や学校は警察に通報することはまれだ。