「目先のご褒美」が
脳の喜びを引き出す

メタボ改善の取り組みは、ビジネスに置き換えられる

メタボ改善を楽しむといっても、生活習慣の見直しには食事の節制や禁酒など、我慢ばかりという印象が強い。そこでも「厳しいトレーニングや、特別な食事制限を課す必要はありません」と大和田先生は助言する。ドカ食いや過度なアルコール摂取はご法度だが、普段どおりの生活なら、むしろ「やっていいこと」のほうが多いという。例えば毎日の運動を終えた後、消費カロリーを超えない範囲でちょっとした甘味を食べるのは、いいご褒美になる。

「会社のリーダーが部下を指導する際、叱れば良いパフォーマンスが出せるとは限らないでしょう。これは人体でも同じ。厳しい命令ばかり出しても、体は言うことを聞きませんし、長続きしません」

そのうえで長続きさせるコツとして、大和田先生は「脳の持っている癖を利用しましょう」と話す。

「人間の脳は、遠い未来の大きな利益より、目の前の快楽を選びたがるという性質があります」と大和田先生。1年後までに10kgやせる、と決めてもなかなか実感がわかず、つい先伸ばしにして目の前の酒や菓子に手を伸ばしてしまうのはこのためだ。取り組みを継続させていくには「1週間で200g落とす」など、短期間で達成可能な目標を設定するのがポイントになる。

脳が好む快楽物質、ドーパミンが分泌されるような工夫も効果的だ。ドーパミンは、何か物事を達成したと感じたときに、大量に放出される。このため「目標達成で得られるご褒美を設定しておけば、喜びがいっそう大きくなります」(大和田先生)

食事もドーパミンを放出する行為の1つ。ファストフードなどでの食事は刺激が強く、ドーパミンを大量に分泌させる。「この刺激に慣れると、普段の食事では物足りなくなってしまいます。嗅覚や味覚がまひしないよう、意識的に“うまみ”を楽しむ舌に変えることが大切です」と大和田先生は警告する。

おすすめは、野菜や魚介類を豊富に食べられる低炭水化物・地中海食。「魚油には肥満とメタボへの予防に有効とされているω3(オメガスリー)脂肪酸がふんだんに含まれていますので、積極的に食べてほしいですね。ω3脂肪酸を手軽に摂れる魚肉ソーセージを利用するのもいいでしょう」

食べる順序にもコツがあり、サラダや野菜のおかずから食べ始めて早い段階から脳の満腹中枢を刺激しておけば、血糖値が上がりにくく、パンなどの炭水化物は控えめでも満足感が得やすい。