自然と「思いやり」のある子に育つ
そしてもうひとつ付け加えるならば、喜びを分かち合う力が育てば育つほど、少し遅れるようにして悲しみをも分かち合う力が育ってくるのです。
悲しみを分かち合う力は意識的に「育てる」ものではありません。子どもが喜ぶことを喜んでしてあげるなかで、喜びを親子で共有することでしか育ちません。そうした時間を最初は親子で、やがて先生や友達と共有していくうちに、悲しみを分かち合う力は育っていきます。
他者の心の痛みや、悲しみを理解する「思いやり」は、ともに喜び合うことを知って、初めて育っていくものなのです。
しつけをする必要があるときにも、「いけないことをすると、お母さんが悲しむ」ということがわかるようになる。お母さんの「怒り」ではなく、「悲しみ」を理解できるようになるのです。「ああ、お母さんが悲しがっている」という気持ちが理解できることで、初めて叱られたことの意味も少しずつわかるようになります。
子どもが喜ぶことをしてあげていれば、やがて大声で怒ったり、怒鳴らなくても、自然にしつけもできるということです。
なぜ「これが欲しい」と大声で泣くのか
「してはダメ」「これはダメ」と言うよりも「こうしたらいいよ」「こうしたほうがいい」とおだやかに、何度も根気強く諭し、そして待つことです。
「あれが欲しいこれが欲しい」と店の前で泣きわめく子どもを見ると、どうしてもお母さんは叱りたくなるでしょう。けれど、なんでそんなに泣くのかといえば「泣かなくては買ってもらえないことがわかっているから」です。
お母さんは「泣けば買ってもらえると思っているから泣くのだ」と思うかもしれないけれど、これは大きな違いです。その子には「泣かなくても買ってもらえた」という経験が少ないのです。おやつひとつでも、小さなおもちゃでも、「どれが欲しい?」「これがいい」と言って、それを買ってもらった経験がほとんどないのだと思います。
その子が泣くのは「このおもちゃがどうしても欲しい」からではありません。お母さんに自分の言うことをもっときいてほしい、ということなのです。