地元募集で集まらなかった「教師」を都市圏で採用
【武中】廊下の一角に卒業生の論文が置かれていました。それぞれ専門的な研究をしていることに驚きました。ただ、こうした論文作成に伴走することのできる教師が必要になります。地方では特に人手不足が甚だしい。教員確保に苦労しませんでしたか?
【織⽥澤】まず鳥取県内で、こうした教育を行う中高一貫校を作りますと掲げて募集しました。そうしたら全然集まりませんでした。そこで東京や大阪で、私学の教職員募集のイベントでブースを出しました。
すると、すぐにやりたいという人が集まりました。その場で40から50人の方の面接を行いました。彼ら、彼女たちが初期メンバーです。
【武中】ユニークな教育方針が都市の人を惹きつけるというのは、なんとなくわかります。
【織⽥澤】当時、多くの私立学校が求めていた教員像は、大きく分けて2つ。1つは東京大学に合格させるような指導力がある。あるいは、スポーツで部活動をインターハイの全国大会に出場させる力のある人間。
【武中】そこで探究をやりたい人、来てくださいって言うと魅力を感じる人がたくさんいた。
大政奉還をメタバースで再現する授業も
【織⽥澤】ぼくの実感ですが、大学の教育学部では、探究学習を教えられる先生を育てている。ところが現場ではそうした先生を活かしきれていない。
偏差値重視で受験勉強、あるいは部活を一生懸命やってください、それ以外はいらない、みたいな。うちは大学で学んだことを、現場で活かしてほしいという話をしています。
【武中】変わった授業もありそうですね(笑い)。
【織⽥澤】ええ。日本史の授業で、江戸時代が終わるときの大政奉還ってありますよね。徳川慶喜が正面に座って、大名が頭を下げているという図です。それをメタバース(仮想空間)で再現している先生がいますね。生徒たちはそれをヘッドセットで見る。
【武中】それはすごい(笑い)。
【織⽥澤】能登地震が起きたときに、どれぐらい地層がずれたかというのをメタバースで作って、みんなで(仮想空間を)ヘリコプターに乗って確認に行ったり。歴史上の偉人が選挙に立候補したらどうなるかとか。他の学校ならば、勝手な授業をやっているんだと潰されたかもしれない。