無制限の差別的な扱いは許されない
なお、政府は皇位継承資格が基本的人権でないことを根拠に、男系男子限定ルールを差別的でないとする。だが説得力がない。
誰でも天皇になれるのではないから、皇位継承資格が基本的人権でないのは、もちろんだ。
しかし、だからといって無制限に差別的な扱いが許されると短絡してはならない。
そのことは、他の長子優先ルールを採用している普通の君主国を見れば分かるだろう。君主の地位の継承資格が基本的人権とされないことはわが国と同様でも、正当な理由がない女性差別は、当然ながら排除されているのだ。
わが国でも例外扱いは、あくまでも憲法が設ける「世襲制」と「象徴制」を維持するために必要な、最小限の範囲内に限られなければならない。
ところが女性天皇・女系天皇を排除することは、一夫一婦制のもとで世襲制を維持するために何ら必要でないどころか、先にも述べた通りむしろ大きなマイナス要因だ(世襲には男性・女性、男系・女系を含むというのが政府見解であり、学界の通説)。
さらに、男女によって構成される「国民統合の象徴」に男性“しか”なれないルールも、現代の価値観に照らして天皇の象徴性を毀損するおそれを抱えている。政府の言い分はまったく通用しない。
衆院議員で「女性天皇」反対は少数派
ここで、興味深い事実を付け加えよう。
今回の衆院選で議席を獲得した人たちの女性天皇への姿勢だ。
事前にNHKが候補者アンケートを行っており、その中で皇室について「女性が天皇になるのを認めることに賛成ですか、反対ですか」「女性天皇の子どもが皇位を継承すること、つまり『女系』の天皇を認めることに賛成ですか、反対ですか」という問いを設けていた。回答は「賛成」「反対」「回答しない」の3択。
これに対して、大急ぎでチェックしてみたところ、当選した465人の衆院議員のうち、女性天皇に対して明確に「反対」の意思を示したのはわずか68人ほどにとどまった(うち1人は回答ミスの可能性が疑われる)。逆にいえば、400人近くは反対していない。