「京都式経営」の軸は共通
伝統と先端を両輪に前進

──いわゆる「京都式経営」が京都の産業の強みともいわれます。

森内 必ずしも唯一の経営モデルがあるわけではないと思いますが、京都企業の多くに共通する経営の軸は認められます。それはまず「先義後利」の精神。道義を優先し、利益は後でついてくるという考え方で、これが高い倫理観やCSRにもつながっているように感じられます。また先義後利に代表される、各社の基本的な経営哲学が明確です。京都企業といっても、ビジネスの舞台は全国、さらにはグローバルマーケットに及びます。その範囲が広くなるほど、経営の根幹をなす理念を堅持していくことは、より重要になるでしょう。

こんなエピソードもあります。1980年代のバブル経済が崩壊しても、京都企業は大けがを負わずに済んだ。そもそも土地や株に、無闇に手を出していなかった。経営の足場、すなわち経営哲学が盤石だから、抑えが利いたのです。同様のことは、高い収益性にも当てはまります。京都企業は自社製品の付加価値を明確に定義し、価格競争に巻き込まれない経営を志向しているのです。

──では今後、京都の産業はどんな役割を果たしていくと考えられますか。

森内 京都の産業界、特にモノづくりの両輪は、伝統工芸と先端技術です。一見、対照的ですが、老舗企業も常に変革を続け、新たな技術を追求しています。組紐の伝統的な技術が、医療の血管補強材に応用された具体例もあります。伝統と先端というポテンシャル豊かな両輪で、京都の産業界は日本を力強くリードしていくものと期待されます。

また「京都」といえば世界に通用するブランド。京都に拠点を構えることで、企業は海外においても求心力を高められるでしょう。別の言い方をすれば、京都は地理的条件や交通インフラとは違った意味でも、「グローバルゲートウェイ」としての機能を果たせるのではないでしょうか。

──その京都で、京都リサーチパークとしてはどんなビジョンを描いていますか。

森内 私たちは1989年の開業以来、オフィスや実験研究スペースなどハードのレンタルや、産学公が「集い・交わり・創る」ためのコーディネートなどソフトの環境整備を担ってきました。成長著しいICTやデジタルコンテンツ、医療・バイオやナノテクなどの分野で活動を展開しています。あくまで黒子ですが、民間企業では他に類がない独自のビジネス価値をいっそうブラッシュアップしたいですね。とりわけ強調するなら、経営計画の策定の協力なども含めた入居企業に対する「伴走支援」です。今後は海外展開の支援なども含めた事業拡大へのきめ細かいサポートを行っていくことで、お互いの発展を目指します。