大阪ガスのグループ企業である京都リサーチパーク(株)。民間企業として、活動スペースの提供やベンチャー企業の支援などにあたる同社の森内敏晴社長に、京都の産業・企業の特色やその背景などを聞いた。京都に学ぶべき元気の源も見えてくることだろう。

京都ならではの産業風土で
老舗もベンチャー企業も活躍

──まず、京都の産業を育んでいる土壌について聞かせてください。
森内敏晴●もりうち・としはる
京都リサーチパーク株式会社 代表取締役社長 1981年、大阪ガス(株)入社。北東部リビング事業部長などを経て現職。京都リサーチパークは「集交創」を社是に掲げ、京都の産学公連携拠点、新産業創出拠点を目指し、事業活動を支援するハード・ソフト両面のサービスを提供。

森内 私は、京都に特有の要素が3つあると考えています。最初に、1200年にも及ぶ歴史。次に、産学公の機能が近接エリア内に凝縮したコンパクトシティであること。さらに、市内に大学や短大が40近くも集まった学問の街であることです。

このような土壌が、産業に及ぼす影響や効果は何か。都としての歴史と伝統は、いまも受け継がれる工芸の数々に息づき、創業から100年以上経つ「老舗」として京都府から表彰された企業は1700超に上ります。また、自社の勝ち残りだけでなく、長い目で腰を据えて事業の社会的意義を考える企業が多いのも、悠久の歴史を反映したものでしょう。

コンパクトシティの効果としては、産学公による濃密なコミュニケーションと良好な関係構築が大きい。みんなで京都を愛し、さまざまな産業・経済の取り組みが「オール京都」というキーワードのもと実行されるのも特徴的です。

学問の街としての京都は、先端技術に高感度な企業、研究開発志向型企業が数多く発展する場ともなっています。

──かつてのベンチャーが、いまや大企業に成長している例も京都には少なくありません。

森内 そのとおりですね。そして今日、ベンチャーを育成しよう、後輩たちを助けようという体制も、オール京都で築かれています。自治体や産業支援機関がベンチャー支援の多彩なプログラムを用意しているのに加え、私たち京都リサーチパークもインキュベーションを事業の核としています。

京都には、どこか排他的なイメージがあるかもしれませんが、実は歴史的に多様性を受容してきた土地柄です。実際、他県の出身者が創業した府内の大手企業もありますし、もちろんベンチャー支援の対象も地元出身の起業家だけではありません。他の地域からもどんどん入って来てほしい。それがオール京都で抱いている思いです。

──コンパクトシティによって促される「濃密なコミュニケーション」は、新たな事業や新製品の創出にもつながっていますか。

森内 はい。ごく最近も、観光業の会社とICT企業の連携による新しいビジネスプランが見られました。ベンチャー企業同士の交流・連携も盛んです。大学の集積度が高いだけに産学連携も活発で、私たちも研究者と企業のマッチングを図るプラットフォームを提供しています。

例えば、いま注目される再生医療分野では、研究現場のニーズに地元のモノづくり企業が技術力で応え、「細胞シート切り取りパンチ」を試作・改良しました。専門の技能をもつ事業者がネットワークを組み、この「試作」を産業化しているのも、京都エリアの1つの特徴といえるでしょう。