話し始めるとその場の誰もが耳を傾け、意見が採用されていく。自らの言葉によって組織を動かしていく影響力を持ちたいと考えるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。しかし、話をしても相手にしてもらえない場合もあります。組織の中での発言力はどうすれば獲得できるでしょうか。読者へのアンケートから探ります。
プレジデント編集部では、2022年12月、PRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。計1140名分を集計しました。
まず、Q1では今回の回答者の役職をうかがいました。「経営者・役員」「管理職」を合わせると53%を占め、回答者の半数がビジネスリーダー層です。
Q2では「あなたは今の職場において発言力がありますか」という質問をしました。回答の中から「経営者・役員」「管理職」「一般社員」の結果をまとめています。「経営者・役員」の割合をみると68%が「(発言力が)ある」と回答していて、「まあある」を含めると96%と大多数を占めています。一方で「管理職」「一般社員」をみると、「経営者・役員」と割合が変わっています。「管理職」は「(発言力が)ある」が29%で、「経営者・役員」の半分以下の割合に、「一般社員」をみるとさらに減り、「(発言力が)ある」は6%以下の割合です。役職によって自分自身に発言力があると感じている人は差があることがわかります。
中でも、「経営者・役員」と「管理職」で回答に差があることは、注目するポイントといえます。会社や組織全体のマネジメントに携わる「経営者・役員」と、部署や部下個人のマネジメントに関わる「管理職」で、自身の発言力の意識に違いがでているのはなぜか興味深いところではないでしょうか。
Q3では「あなたは新しい集団の中でも発言力がありますか」という質問をしました。Q2と回答の傾向が似ていますが、比較すると「(発言力が)ある」と回答した割合が「経営者・役員」は68%から33%に、「管理職」は29%から9%に、「一般社員」においては6%から3%の割合になりどれも半分ほど少なくなっています。どの役職でも“新しい集団”となると自分自身に「(発言力が)ある」と言い切ることは難しいのかもしれません。
Q4では「あなたは過去に、今の職場で発言力を失ったと感じたことはありますか」という質問をしました。役職別にみると「経営者・役員」と「管理職」「一般社員」で回答の傾向が異なります。「経営者・役員」は「(感じたことは)ある」が28%だったのに対して、「管理職」は43%、「一般社員」は42%と「経営者・役員」に比べると少し多くなっています。
この「発言力を失った」という質問に関して、Q6で「発言力を失うのはどのようなときだと思いますか」という関連した質問をしています。ビジネスパーソンはどんな場面で自身の発言力を失ったと感じたのか、解答例をいくつかご紹介します。
Q5では「発言力を持つために最も必要なものはなんですか」という質問をしました。中でも「発言しようとする意志、積極性」がどの役職でも比較的多くなっています。まずはどの役職においても、自ら発言していく意志や積極性が最も必要だと考えているようです。「管理職」は他の2つの役職と少し異なり、「良好な人間関係」という項目も29.8%で多くなっています。この項目においては、「管理職」が他の2つと比べても多い結果になっていることが特徴的です。経営者・役員など自分より上の立場、まとめるべき部下などさまざまな立場の人とかかわる管理職ならではの回答と推測できます。
Q6では「発言力を失うのはどのようなときだと思いますか」という質問をしました。まず、どの役職でも回答が多くなっているの項目は、「周囲への横暴な振る舞いが増えたとき」です。「経営者・役員」「管理職」「一般社員」どれも、回答が最も多くなっています。横暴な振る舞いをはじめ、自身の印象を下げるような態度・発言は、常に気を付けていきたいものです。
Q7は自由記述で「発言力を失ったあと、何をしたか教えてください」という質問をしました。寄せられた回答として以下のようなものがありました。
●発言できるだけのインプットを行った。機会があれば躊躇せず発言するように心がけた(管理職)
●実績をつくる努力を続けた。外部に味方ができ、社内での発言が再確立されていった(管理職)
発言力を失ったと気づいた時、ビジネスパーソンたちは上記のような行動をとっています。
失ったままでいるわけではなく、自分ができること・実績や実力につながる精一杯の努力をしていることがわかります。
Q8では「発言力を維持するために、気をつけていることを教えてください」という質問をしました。Q7と同じく自由記述でうかがっています。
●命令する場面と強調する場面をしっかり使い分ける。あとは発言内容に「なぜならば」と付け加えるようにすること(管理職)
●周囲の賛同が得られる内容か考えてから発言すること。もし賛同が得られないような内容のときは、理解してもらえるように準備してから発言するようにしている(管理職)
共通していえることは、自分本位にならず、相手の受け取り方を考えたコミュニケーションを心がけている点です。ビジネスパーソンは、相手の受け取り方を意識して伝える工夫をしており、このような心がけで“良好な人間関係”を構築しているのではないでしょうか。“良好な人間関係”はQ5でおこなった「発言力を持つために最も必要なものはなんですか」の項目の中で、2番目に多い回答です。自ら発言する意欲や積極性は重要ですが、自己中心的な姿勢になってしまうと、目的が逆に果たされないでしょう。
組織の中で影響力を持つために、自らの言葉で組織を動かす発言力は重要です。今回の結果から、発言力を獲得していくには、自分の意志や積極性はもちろんですが、周囲と良好な人間関係を築くことも大事な要素のひとつだとわかりました。この良好な人間関係を維持するために、協調性や日々の振る舞いに気を付ける――。このような心がけで日々研鑽し続けることで、周囲と良好な関係性を築け、結果的にビジネスパーソン自身の発言力・影響力を高められるのではないでしょうか。
*四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。
*調査&集計方法:2022年12月、PRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。計1140名分を集計。
*構成:PRESIDENT編集部
『PRESIDENT』では、今後もこのような読者への独自調査を続け、ビジネスパーソンの本音をひもとく取り組みを続けてまいります。
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