プレジデント調査室vol.9 会社で多様性は尊重されている?
仕事や人生の重要テーマについて、PRESIDENT編集部が独自に行った調査からビジネスリーダーの偽らざる本音をあぶりだす「プレジデント調査室」。その調査結果について、PRESIDENT Business Portalにてお伝えします。第9回のテーマは「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」です。

企業が人々の多様性を尊重し、活躍の機会を提供する。D&Iは、企業の競争力を高める観点からも、今や常識になりつつあります。しかし、掛け声だけにとどまっている企業も少なくはありません。経営者たちと現場との間に生まれる認識の差を探りました。

プレジデント編集部では、2022年7〜8月、PRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。372名から回答を得ました。そのうち、経営者・役員57名、会社員(総合職)166名、会社員(一般職)73名に該当する296名分を集計しました。

【図表】経営トップが「D&I」を経営戦略の重要課題と位置づけ、自らがそのリーダーとして取り組みを積極的に推進している

まず、Q1「経営トップが『D&I』を経営戦略の重要課題と位置づけ、自らがそのリーダーとしての取り組みを積極的に推進している」という設問では、役職によって「とてもそう思う」の回答の割合に違いがでました。会社員(総合職)は、「とてもそう思う」が25.9%でD&Iをよく意識していることがわかります。コア業務を担う総合職がD&Iを意識していることはどの企業にとっても前向きな結果といえます。一方で、一般職は「とてもそう思う」が6.8%でした。まだ企業のなかでサポート業務を中心に担っている一般職まではまだその取り組みや成果が実感されていないのが現状のようです。今後は、一般職の職員まで、自社企業の「D&I」に関する取り組みに関心を持ってもらい、会社として「D&I」にどう向き合っていくのか、理解促進していくことが求められます。

【図表】各種「D&I」の施策や情報発信により、この1年間で、会社内の「D&I」に対する意識は高まっている

Q2「各種『D&I』の施策や情報発信により、この1年間で、会社内の『D&I』に対する意識は高まっている」という設問は、経営者・役員、会社員(総合職・一般職)共通で「とてもそう思う」「ややそう思う」が4分の1以上を占めています。ただ、経営者・役員層は会社員とは違い、「どちらでもない」の回答が35.1%でした。重要な経営課題として「D&I」を設定しているものの、社員が実際どう感じているのか、施策や情報発信の効果をしっかりと感じられていない現状を示しているのではないでしょうか。

【図表】「D&I」について否定的な言動を行う社員がおり、現場の士気を下げている

Q3「『D&I』について否定的な言動を行う社員がおり、現場の士気を下げている」という設問では、経営層と会社員で結果が少し異なりました。経営層は「あまりそう思わない」「全くそう思わない」を合わせると、半分以上を占めています。一方、会社員(総合職・一般職)は「あまりそう思わない」「全くそう思わない」を合わせても4割程度にとどまりました。経営層と会社員の間で、現場の印象に差があるのかもしれません。

【図表】昇進・昇格の基準が明確になっており、属性に関係なくキャリアアップできる機会が与えられている

Q4「昇進・昇格の基準が明確になっており、属性に関係なくキャリアアップできる機会が与えられている」という設問では、経営者と一般職の間で意識の差が顕著となりました。会社員(一般職)は、「あまりそう思う」「全くそう思わない」を合わせると52%でした。比較的女性が多く、キャリアプランも固定されている一般職の職員が、昇進やキャリアアップの機会の少なさに課題感を持っているのかもしれません。経営者はこの一般職の意識を頭に入れておくべきといえます。

【図表】古い慣習や概念にとらわれず、自分の意見を気兼ねなく自由に発言でき、それがポジティブに受け入れられる環境である

Q5「古い慣習や概念にとらわれず、自分の意見を気兼ねなく自由に発言でき、それがポジティブに受け入れられる環境である」という設問では、Q3と同じく経営層と一般職で回答に大きく差がありました。特に、一般職の「全くそう思わない」は20.5%と他と比べても多く、この層が自分の意見を発言しにくいと感じていることがわかります。経営層はこの現状を真摯にとらえ、どんな役職でも声をあげやすくする必要がありそうです。

【図表】現在の職場ではハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラなど)を許容する雰囲気がある

Q6「現在の職場ではハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラなど)を許容する雰囲気がある」という設問では、対して、経営者・役員は「全くそう思わない」が19.3%、「あまりそう思わない」が43.9%と、過半数は各種ハラスメントを許容する雰囲気は感じていないようです。対して、会社員(総合職・一般職)で「とてもそう思う」「ややそう思う」が多くなっており、経営層と会社員という職位の差によって、職場内でハラスメントを許容する雰囲気を感じているかには差があります。特に各種ハラスメントの被害者となりやすいとされる一般職からの回答に「そう思う」「ややそう思う」という回答が多かったのは見過ごせる結果ではありません。経営者として、これらの行為は絶対に許されるものではないという強い姿勢を見せることも大事ではないでしょうか。

【図表】両立支援制度(育児、介護)の利用者に対して、周囲の上司や同僚は協力的である

Q7「両立支援制度(育児、介護)の利用者に対して、周囲の上司や同僚は協力的である」という設問では、どの層も「とてもそう思う」「ややそう思う」を合わせると、過半数を占める結果でした。経営層、会社員どちらも「(周囲の上司や同僚は)両立支援制度の利用者に対して協力的」と感じているようです。しかし、同じ会社員でも総合職と一般職では回答結果に差があります。一般職のほうが「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の回答が多く、雇用形態の差で感じ方の違いがみられます。

今回の調査結果から、経営者・役員と会社員(総合職・一般職)の間には、「D&I」に関するさまざまな視点において感じ方に差があることがわかりました。「D&I」に対する施策を全社的に進めていくことは、これからの時代において急務の経営課題。より「D&I」を推進していくために、自社ではどのような施策を立てるべきか、すでに進めている施策は効果的か、など考える際には、「従業員はどう感じているのか」に目を向けていくべきではないでしょうか。

*四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。
*調査&集計方法:2022年7~8月、PRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。372名から回答を得た。経営者・役員57名、会社員(総合職)166名、会社員(一般職)73名に該当する296名分を集計。
*構成:PRESIDENT編集部

『PRESIDENT』では、今後もこのような読者への独自調査を続け、ビジネスパーソンの本音をひもとく取り組みを続けてまいります。

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