
インターネットメディアの台頭と多様化、企業の広告予算のインターネットシフトによって、事業モデルの変革に迫られているビジネスメディア。雑誌の休刊が相次ぐなか、オンライン版の会員化や有料コンテンツに注力し、広告メニューを刷新する動きも起きています。
「広告の出稿先」としてビジネスメディアを捉えた時、広告主様は何を判断材料に媒体を選定すればいいのでしょうか。日本を代表するビジネスメディアに、自社メディアの特徴や強み、今後の展望について話を聞きました。
本稿では、株式会社プレジデント社 メディア戦略本部 副本部長 兼 事業推進部 部長の安田 敦と、メディア事業本部 副本部長 兼 第一メディア事業部 部長の新居裕規が登場し、合同会社デフサンの吉村 康氏をファシリテーターにお迎えし、株式会社ITコミュニケーションズの松岡秀昌氏と行った鼎談の模様をお届けします。
印刷版販売部数で国内ナンバーワンのビジネス誌
【吉村 康(以下、吉村)】ビジネスメディアとITコミュニケーションズ(ITC)の鼎談企画、2社目となる今回はプレジデント社様です。本日はよろしくお願いいたします。
まずは松岡さんから、この鼎談会を開催する趣旨について説明をお願いします。
【松岡秀昌(以下、松岡)】本日はよろしくお願いいたします。われわれITコミュニケーションズ(ITC)は、日本経済広告社グループに所属する広告代理店として、主にIT関連BtoB企業の広告主様に、多様なメディアへのご出稿を提案しています。ビジネス誌やビジネスパーソン向けの情報サイトもそうした媒体メニューに含まれていますが、他の媒体との違いや、各ビジネスメディアの特徴、出稿(or 出広)のメリットについて、もっと詳しく知りたいという声をよくいただきます。
まずは、プレジデント社が発行・運営するメディアの特徴についてお聞かせください。
株式会社プレジデント社 メディア戦略本部 副本部長 兼 事業推進部 部長
取次会社・出版社を経て、2015年入社。プログラマティック広告を担当する他、CRM・CDP・MAなどデータ全般の管理・運用を統括。『PRESIDENT』の知見を活かした動画学習サービス「プレジデントオンラインアカデミー」や⾷のエンターテインメントメディア『dancyu』によるコミュニティ「dancyu⾷いしん坊倶楽部」の事業開発や運用にも携わる。
【安田】『プレジデント』は1963年に米タイム社の雑誌『フォーチュン』の提携誌として創刊しました。ビジネスリーダーの指針となる経営戦略&自己啓発・ビジネスマーケティング情報・リーダー学・海外情報等を提供することから始まり、お陰様で2023年に60周年を迎えることができました。2024年上期の印刷版販売部数は9万6,606部(日本ABC協会公表)で、ビジネス誌として20期(10年)連続で国内ナンバーワンを獲得しています。
ビジネスパーソンのための総合情報サイトである「PRESIDENT Online」は、2011年12月に運営を開始。2024年12月で14年目に入りました。ビジネス人生をより豊かなものにするために必要な情報をタイムリーにお届けし、職場の悩みを解決し、理想的な働き方を実現するヒントを提示するメディアと位置付けており、PV数は約9,000万、UU数は約1,600万です。
【吉村】ビジネス誌の中で印刷版販売部数が国内最大というのは、非常に大きなアドバンテージですね。他のビジネスメディアとは、どんな点が違うのでしょうか?
株式会社プレジデント社 メディア事業本部 副本部長 兼 第一メディア事業部 部長
テレビ局、消費財メーカーを経て2008年プレジデント社に入社。広告本部プレジデント広告部(現メディア事業本部第一メディア事業部)に配属となり、PRESIDENT、プレジデントFamily、PRESIDENT WOMAN、PRESIDENT Onlineの広告およびコンテンツ開発によるマネタイズに従事。2018年に部長、2024年より副本部長に就任。既存および新たな事業と企画の推進を通して、ビジネスメディアPRESIDENTの成長を担う。
【新居】当社には、他のビジネスメディアのような記者がおらず、すべての記事を編集部員が制作しています。一般に、記者は「何を報じるべきか」と考え、ニュース性を大切にしますが、編集者は「読者が求めているものは何か? 読者にとって何がおもしろいか?」ということを出発点として企画を立て、記事をまとめます。結果として、読者に寄り添った情報発信ができるようになるわけです。
【松岡】テーマ選定の切り口も、他のビジネスメディアとは異なるそうですね。
【安田】一般的なビジネスメディアは、経済や産業の動向、個別企業の経営などに関する記事が多くを占めていますが、『プレジデント』と「PRESIDENT Online」は、社会問題や、ビジネスパーソンとしての生き方・働き方、リーダーシップを発揮する方法など、問題解決のための記事が中心となっています。
「ビジネスリーダーのための問題解決メディア」「ビジネス教養メディア」というのが、われわれのアイデンティティです。
健康、資産運用、時間術など、ビジネス以外のテーマもカバー
合同会社デフサン 代表 兼 CEO
大学卒業後、東洋経済新報社へ入社。法人営業部門、新規事業開発のチームリーダーを経てコーポレートコミュニケーション部長に。局次長兼メディア(広告)営業部長を6年間務めた後、マネジメントソリューションズへ転職、ブランドマーケティング部長に就任。メディアの世界で、広告を提案営業する側と宣伝広告を出す側の両方を経験。現在は独立し、多くのビジネスメディアの広告事業を支援している。
【吉村】『プレジデント』が創刊して間もないころは、戦国武将のリーダー論に関する特集記事などを毎回掲載して注目を集めたのを覚えています。「問題解決メディア」としてのアイデンティティは、創刊当時からずっと変わっていないわけですね。
【新居】芯の部分は変わっていませんが、取り上げるテーマは時代に合わせてつねにアップデートしています。とくに大きく変わったのは、リーマンショックや東日本大震災が起こった2000年代から2010年代にかけてのことです。
それまでは、営業で成果を上げるためのノウハウや、部下を引っ張っていくためのコミュニケーション術といったビジネスに直結するテーマが中心だったのですが、2010年以降は、健康や資産運用、時間術といったプライベートの問題解決に関する記事も増えました。オン、オフにかかわらず、ビジネスリーダーの目の前にある問題を解決するためのヒントになる記事を提供しています。
その結果、読者もかつての経営者層に加えて、世代を問わずにビジネスの最前線で活躍するビジネスリーダーへと広がりを見せています。そのため、BtoBの広告も今まで以上によい訴求効果を残しています。
【松岡】プライベートの話題までカバーしているというのは、BtoC企業だけでなく、BtoB企業に勤める担当者への訴求力を高めたい広告主にとって非常に魅力的だと思います。ITCが宣伝・マーケティングを支援するIT関連BtoB企業の広告主様の多くは、スペックを訴求するだけでは、製品やソリューションの魅力を十分に伝え切れないと悩んでおられます。
その点、ビジネスメディアなら、実際のビジネスシーンを想定して「こんな使い方があります」と具体的な提案ができますし、プライベートにまで言及できるのなら、「家庭では、こんなふうに楽しめます」と訴えることも可能ですからね。
【吉村】広告主が訴求したい内容を効果的に表現するため、プレジデント社は、どのような取り組みを行っているのでしょうか?
【安田】情報の作り手である「編集」、広告を獲得する「営業」、雑誌の定期購読者やオンラインの会員を増やす「マーケティング」が、それぞれの知見を持ち寄り、三位一体となって広告主様のご要望に応えられるような体制づくりを進めています。
【新居】2023年より、「PRESIDENT Online」の編集長が毎月1回、営業社員に向けて、「いまどんな記事に注力しているのか?」「日ごろ、何を大切にしながら編集を行っているのか?」といったことをレクチャーする機会を設けています。こうしたコミュニケーションによって、営業担当者が広告主様や広告会社様に提案する企画の幅が広がり、よりよい広告効果を発揮できるメディアとなることを目指しています。
2025年にオンラインの有料会員サービスを開始予定
株式会社ITコミュニケーションズ 第一ビジネスユニット 兼 マーケティングユニット 部長
BtoBマーケティング一筋10年。セールス兼マーケティング部の長として、営業組織とマーケティング部を統括。外資系ITクライアントで培ったフルファネルマーケティングのノウハウを活かし、様々な業界への支援を展開。特にBtoB領域におけるマーケティング支援では、戦略策定から、認知拡大、リード獲得、イベント企画・運営、メール・コンテンツマーケティングにおける制作、インサイドセールス支援、MA/CRMツールの活用等、幅広く対応している。
【吉村】プレジデント社は、食の情報誌『dancyu』、家族をテーマとする情報誌『プレジデントFamily』なども発行しています。そうしたビジネス以外の雑誌、情報サイトの編集ノウハウや、定期購読者への訴求なども、広告主にとっては魅力的だと思います。
【新居】当社は編集本部の中に、編集経験豊かな人材を集めた「ブランド事業部」という部署を置いています。タイアップ広告などの制作を受けたときに、各雑誌および情報メディアの編集ノウハウを発揮して、広告する商品・サービスのブランドイメージを高める企画や表現方法を立案する部署です。
プレジデント社はビジネス専門のメディアだと思われがちですが、それ以外にも、さまざまなテーマに関心を持つ読者に訴求できる媒体を持っていることを、ぜひ認識していただきたいですね。
【吉村】今後は、広告主や読者にどのような価値を提供していきたいとお考えでしょうか? ひとまず2025年の予定についてお聞かせください。
【安田】これまで以上に読者と向き合う1年にしたいと考えています。具体的には、2025年中に「PRESIDENT Online」の有料会員サービスを開始する予定です。
これまでは無料会員サービスのみでしたが、有料会員サービスを始め、雑誌『プレジデント』の定期購読サービスと融合させることも検討しています。これによって読者の属性や行動に関するデータの解像度がさらに高まり、広告主様により価値の高い広告メニューが提案できるようになります。
早ければ、上期には具体的なメニューをご提案したいと思っています。
【新居】2024年にハイブランド商品の動画やオンラインセミナーを「PRESIDENT Online」上で複数配信したところ、読者からも広告主様からも非常に好評でした。これを受けて、動画コンテンツの充実も図っていきたいと考えています。
ほかにも、まだ構想段階ですが、日本のビジネスパーソンを元気づける大規模企画などを検討しています。
【松岡】読者の属性や行動特性がより精緻に分類できるようになれば、ターゲットごとの訴求もしやすくなりますね。リードを獲得するだけでなく、商品・サービスの潜在顧客に狙いを絞って、効率よくブランドをアピールすることができそうです。
【安田】当社は、広告主様の問題解決のためには、どのようなアプローチや表現が有効なのかという知見は十分に蓄積していると自負しています。
その一方で、広告主様がどんな問題を解決したいと思っているのかは、日々、広告主様と向き合っておられる広告代理店の方々のほうがよく知っています。
互いの強みを生かしながら、一緒に広告主様の問題解決に貢献していきたいですね。
【松岡】われわれ広告代理店としても、ぜひ一緒になって、お客さまによりよい価値を提供していきたいと思っています。

安田 敦(ヤスダ アツシ)
株式会社プレジデント社
メディア戦略本部 副本部長 兼 事業推進部 部長
取次会社・出版社を経て、2015年入社。プログラマティック広告を担当する他、CRM・CDP・MAなどデータ全般の管理・運用を統括。『PRESIDENT』の知見を活かした動画学習サービス「プレジデントオンラインアカデミー」や⾷のエンターテインメントメディア『dancyu』によるコミュニティ「dancyu⾷いしん坊倶楽部」の事業開発や運用にも携わる。

新居 裕規(アライ ヒロキ)
株式会社プレジデント社
メディア事業本部 副本部長 兼 第一メディア事業部 部長
テレビ局、消費財メーカーを経て2008年プレジデント社に入社。広告本部プレジデント広告部(現メディア事業本部第一メディア事業部)に配属となり、PRESIDENT、プレジデントFamily、PRESIDENT WOMAN、PRESIDENT Onlineの広告およびコンテンツ開発によるマネタイズに従事。2018年に部長、2024年より副本部長に就任。既存および新たな事業と企画の推進を通して、ビジネスメディアPRESIDENTの成長を担う。

吉村 康(ヨシムラ ヤスシ)
合同会社デフサン
代表 兼 CEO
大学卒業後、東洋経済新報社へ入社。法人営業部門、新規事業開発のチームリーダーを経てコーポレートコミュニケーション部長に。局次長兼メディア(広告)営業部長を6年間務めた後、マネジメントソリューションズへ転職、ブランドマーケティング部長に就任。メディアの世界で、広告を提案営業する側と宣伝広告を出す側の両方を経験。現在は独立し、多くのビジネスメディアの広告事業を支援している。

松岡 秀昌(マツオカ ヒデアキ)
株式会社ITコミュニケーションズ
第一ビジネスユニット 兼 マーケティングユニット 部長
BtoBマーケティング一筋10年。セールス兼マーケティング部の長として、営業組織とマーケティング部を統括。外資系ITクライアントで培ったフルファネルマーケティングのノウハウを活かし、様々な業界への支援を展開。特にBtoB領域におけるマーケティング支援では、戦略策定から、認知拡大、リード獲得、イベント企画・運営、メール・コンテンツマーケティングにおける制作、インサイドセールス支援、MA/CRMツールの活用等、幅広く対応している。
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