プレジデント調査室_vol.8 仕事で怒った相手は誰?
仕事や人生の重要テーマについて、PRESIDENT編集部が独自に行った調査からビジネスリーダーの偽らざる本音をあぶりだす「プレジデント調査室」。その調査結果について、PRESIDENT Business Portalにてお伝えします。第8回のテーマは「怒り」です。

2022年4月より中小企業も対象になったパワハラ防止法。感情のままに部下を叱りつける、そんな振る舞いはもはやご法度です。とはいえ仕事をしていれば、時には体が震えるほど腹が立つこともあります。ビジネスリーダーたちはどんな時に怒り、どう対処するのか、聞きました。

プレジデント編集部では、2022年7月、PRESIDENT Online会員に対してアンケートを実施。1699名から回答を得ました。ビジネスリーダー847名(経営者・役員289名、管理職558名)、一般社員590名に該当する1437名を集計しました。

【図表1】仕事をしていて、激しく怒ったことがありますか。

まず、Q1では「仕事をしていて、激しく怒ったことがありますか。」という質問をしました。「(激しく怒ったことが)ある」と回答した人はビジネスリーダーで58.9%、一般社員で53.1%と、どちらも半数以上が「ある」と回答しています。どんなに冷静に判断をしていても、自分の感情を抑えられないくらい怒りを感じたことは、多くのビジネスパーソンにあるようです。続いて、どのような相手に、どのようなシチュエーションで怒りを感じたことがあるのか、詳細を見ていきます。

【図表2】最も激しく怒りを感じたことがある相手を、教えてください。

Q2で「最も激しく怒りを感じたことがある相手を、教えてください。」という質問をしたところ、ビジネスリーダーと一般社員では違いが明らかになりました。ビジネスリーダーでは「上司」が相手であることが34%、次いで「部下」が相手でした。一方で、一般社員は「上司」相手が43.9%と半数近い結果となりました。ビジネスリーダーの最も激しく怒りを感じたことがある相手が「上司」「部下」という結果だったのは、部下を多く抱え、かつ上司とも円滑にコミュニケーションをとっていかなければならない立場にいるビジネスリーダー層ならではといえるのではないでしょうか。

Q3では「(怒ったことが)ある」と答えた方に対して、「激しい怒りを感じたのは、どのようなときか、教えてください。」という質問をし、以下のような回答が寄せられました。

寄せられた声
●上司が誰彼構わず部下をつかまえては些末なことで怒鳴り声を上げ、組織の空気を極めて悪くしていたとき。(管理職)
●顧客が著しく理不尽な要求・強い怒りをぶつけてきて、部下が精神的に衰弱している様子を見たとき。(経営者・役員)
●部下が自分の義務を果たさず、権利だけを主張したり、他社を攻撃し、チームワークを乱したとき。(管理職)
●同僚にどうでもよい仕事を「ついでによろしく」と、チャットで依頼されたとき。押し付けられた感じがして怒りを感じる。(一般社員)

立場が違っても、怒りを感じた場面に共通することは、「空気や雰囲気の悪い状況」「自分やまわりにいる人の理不尽な状況」に直面したときではないでしょうか。

【図表4】自分の怒りをコントロールしようとしたことがありますか。

Q4では「自分の怒りをコントロールしようとしたことがありますか。」という質問をしました。この質問はビジネスリーダー、一般社員ともに「(コントロールしようとしたことが)ある」と回答した人が圧倒的で、ビジネスリーダーの95.6%、一般社員の96.8%と多くの割合を占めました。Q1でも触れたように、普段どんなに冷静に仕事をしていても怒りを感じることがどんなビジネスパーソンでも起こりえることでしょう。しかし、怒りを意識してコントロールする、自分の怒りに向き合うアンガーマネジメントを心がけているビジネスパーソンが多いということが想像できます。

【図表5】仕事の場面で、怒りを表現することは役に立つと思いますか。

Q5では「仕事の場面で、怒りを表現することは役に立つと思いますか。」という質問をし、役に立つかどうか0〜10までの数値で回答いただきました。グラフを参照すると、最も多い回答はビジネスリーダー、一般社員ともに5でしたが、グラフの長さをみると「役に立たない」に近い回答が少し多い傾向でした。「全く役に立たない」との回答も多く、「怒り」は相手や状況をよくするのに役に立たないと考える人が一定数いることがわかります。一方で「大いに役に立つ」との回答もあり、あえて「怒り」を表現することを肯定的に考えている人もいるようです。

また、Q6では、Q5の回答理由をききました。

寄せられた声
【全く役に立たないに近い理由】
●ほかの方法で同じ効果は得られる。怒りの表現は感情に訴えるだけで本当の理解につながらない。(0の回答、経営者・役員)
●「怒り」は内面にとどめ、理路整然と指導しないと部下は付いてこないから。(3の回答、管理職)

【大いに役に立つに近い理由】
●強い意志を伝えるために必要。ただ、相手を萎縮させたりしては逆効果なので程々にしておく。(7の回答、経営者・役員)
●めんどくさい人と思われたほうが余計なことを言われないことが多いから。(10の回答、一般社員)

「怒り」を表現することが「役に立たない」と考える人は、「怒り」では相手の本当の理解につながらないと考えています。対して、「役に立つ」と考える人は強い意志を伝えるなど、日々の仕事のメリハリをつけるためには効果的と考えているようです。あえて「怒り」を表現することで、自分にふりかかる面倒事をあらかじめ回避できるようにしているというユニークな意見もありました。

相手に自分の思いが伝わらないなど、仕事の場面で怒りを感じる状況に直面することもあるかもしれません。しかし、パワハラ防止法の施行など、感情のままに強く相手に訴えかけることは必ずしも効果的とはいえない風潮になっています。自分の思いや考えを伝えるために、これからは相手を尊重した対応が必要です。「怒り」とは別に思いを伝える方法を考えておくべきではないでしょうか。

*四捨五入の関係で合計が100%にならない場合があります。
*調査&集計方法:2022年7月、PRESIDENT Online会員1699名から回答を得た。ビジネスリーダー847名(経営者・役員:289名、管理職:558名)と、一般社員590名に該当する1437名分を集計。
*構成:PRESIDENT編集部

『PRESIDENT』では、今後もこのような読者への独自調査を続け、ビジネスパーソンの本音をひもとく取り組みを続けてまいります。

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