「働く」ことの再定義が今、求められている理由
――リモートワーク、ハイブリッドワークが浸透し、企業ではどんな課題が生まれていると感じますか。
【遠藤】雑談や偶発的な会話がなくなった。相手の真意や機微を捉えづらくなった。一つ一つは小さなことでも、こうしたコミュニケーションの変化が積み重なると、組織の活力が徐々に奪われていきます。また、働き方が多様化する中、ナレッジが属人化したり、新人など従業員のケアが不十分になったり、マネジメントも難しくなってきている。いずれも放置すると、生産性の低下に直結する見過ごせない課題といえます。
――そうした状況の中、NTTデータは「Work Re:Invention」というコンセプトを打ち出しています。
【遠藤】今、「働く」ことを再定義する必要がある。そうして従業員や求職者から“選ばれる企業”にならなければ、いずれ経営が立ち行かなくなるというのが私たちの問題意識です。国内の労働人口が減少し、人材の流動化が加速、さらに今後はデジタルネイティブ世代が組織の中核を担っていくことになります。そうした中では、リアルとデジタルを意識せず、相互に行き来できる環境の整備などが必須になるでしょう。従来の延長線上で報酬や社内制度を刷新するだけでは優秀な人材を確保するのは極めて難しく、働く環境を根本的に見直す必要がある。それがImpro-vement(改善)でなく、Invention(発明)という言葉を使った理由です。
――今回の新サービスは、そのような課題の解決を支えるわけですね。
【遠藤】私たちは2030年の働き方像として、「クリエーティブな業務に集中できる」「いつでも・どこでも・誰とでも働ける」「身体や精神面の負荷を個人別に予兆管理できる」といったことを想定しています。それらを実現し、従業員のエンゲージメントを最大化することを目的としたのが今回の新サービス。まずは、「XR(※)」「パーソナルアシスタント」「ウェルビーイング」の3カテゴリーで四つのサービスの提供を開始しました。
※クロスリアリティ。VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といった先端技術の総称。
自社でサービスを利用して使い勝手や効果を体感
――具体的なサービスの概要を教えてください。
【遠藤】XR分野の「Coome」では、メタバースオフィスを提供します。従来のオフィスでは当たり前に行われていた気軽な相談や報告をテクノロジーの力でサポートするのが狙い。リモートワークによる孤独感の解消にも有効です。メタバースというと、エンタメ分野のイメージが強いですが、私たちはこれをビジネスの世界でしっかり使えるものにしていきたい。そう考えています。
パーソナルアシスタントサービスの「knowler」は、AIを活用したナレッジシェアの仕組みです。従来のシステムと大きく異なるのは、ドキュメント情報に加え、“一緒に働く人の業務内容や知見”なども共有できること。必要な情報を持っている人がどこにいるのかが可視化され、それをAIが適切にレコメンドしてくれます。
そしてウェルビーイング関連では、音声データを基に従業員のメンタル状態を数値化する「MIMOSYS」、業務中のPCの操作やアプリの使用状況のデータを収集し、それを分析、レポートする「Qasee」を提供しています。
ハイブリッドワークの課題解決に貢献する4つのソリューション
――サービス提供に当たってNTTデータの強みはどこにありますか。
【遠藤】一つは自分たちで実際にサービスを利用して、使い勝手やセキュリティ性を体感し、それをお客さまにアジャストして提案できることです。
例えば「Qasee」で業務を分析すると、同じような業務をしている個人やチームも、やり方しだいで成果に大きな差があることが見えてくる。つまり成果の出やすい働き方を見いだせるわけです。分析レポートは当然マネジャーも確認できますから、部下の業務量や負荷を定量的に把握し、適切に管理するのにも便利だと実感しました。
一方で当社は、これまで多種多様な業種のお客さまのICT活用をサポートし、その中でそれぞれのあるべき姿を共に描いてきました。そうした実績と自社での実体験を掛け合わせることで、個々のお客さまの状況や目的に合わせた提案ができると考えています。
――最後に、従業員が快適に働ける環境をつくりたいと考える経営者、リーダーにメッセージをお願いします。
【遠藤】今回の新サービスについて、「導入を検討したい」との反響をすでに多数頂いています。やはり多くの企業が、働き方が変わり、これまでの仕組みではうまくいかないとの課題感を強くお持ちでした。ただ、その中では「いい解決策がなく、どうしたらいいか分からなかった」との声もよく聞かれました。まさにそうした経営者の方たちに、一歩踏み出すきっかけを提供するのが当社の役割です。今どんな課題を抱え、将来どんな企業になりたいか、ぜひ私たちに思いをぶつけていただきたい。これからの時代に選ばれる企業となるために何が必要か。お客さまに伴走し、共にあるべき未来を追求していきたいと思います。