1954年に三栄水栓製作所として創業し、2018年、SANEIへ社名を変更。各種水栓をはじめ多様な水回り商品の製造・販売を手掛ける同社は、20年に東京証券取引所第2部に上場し、コロナ禍においても売上高を伸ばすなど確かな業績を重ねている。今から55年前、日本で初めてのシャワー付き湯水混合水栓を製造・販売し、現在は水回りから発想した空間の提案まで行うSANEIの原動力はどこにあるのか。新たなコンセプトの下で事業をけん引する西岡利明社長が語る。
SANEI
1954年創業。水栓をはじめ給排水器具などの製造・販売を行う。独自の技術と柔軟な発想で数々の画期的な商品を開発。現在、水回りから快適な暮らしを追求し、空間全体をコーディネートすることにも力を注ぐ。
西岡利明(にしおか・としあき)
1958年大阪生まれ。81年近畿大学を卒業し、オリエント貿易に入社。82年三栄水栓製作所(現SANEI)入社。常務取締役就任、大連三栄水栓有限公司董事長(現任)などを経て、2004年より現職。

当社は、2022年度のコンセプトを「Think Life. Make Act. 行動しよう。未来のために。」としています。もともと私たちの理念は「人類ある限り水は必要である」。サステナブルという言葉が社会に浸透する前から地球環境を意識した企業活動に取り組んできました。しかし、人が利用できる水はますます希少なものとなり、世界中で水を巡る問題はいっそう深刻化しています。であれば、自分たちがすべきことを改めて見つめ直し、それを具体的な行動につなげていこう──。コンセプトにはそうした思いを込めています。

地球上に「水」が存在するようになっておよそ45億年。以来それは、脈々と循環を続け、生命を育んできました。まさにその中で、“水と人が触れ合うところ”にあるのが私たちの商品です。その意味で、環境負荷の低減は重要な経営課題ですし、商品を通じて水と人との関わりをいっそう心地よいものにしていくことが私たちの使命だと考えています。

“感性”に訴えかけることでユーザーの理想を実現する

創業から68年、当社はこれまでの自らの歩みを「点から線へ、そして面へ──」と表現しています。水道用品の組み立て、卸販売からスタートし、本格的な自社生産体制を築いた1980年までが“点”の時代。そして、水栓に加えて、建物内の給水・排水環境全体を担うようになったのが“線”の時代。さらに社名を変更した2018年以降、キッチンやバスルームなど水に関わる空間のプロデュースにも力を注ぐ現在を“面”の時代と位置付けています。

こうして事業を進化させてきたのは、何よりお客さまのニーズにより高いレベルで応えたいとの考えからです。例えば新たに住まいをつくるとき、人それぞれ理想とするイメージがあるでしょう。単に個々のパーツだけを提供する企業ではそれを具現化するのは難しい。まして、ライフスタイルや暮らしに求められるものが多様化している現在、水の通り道全てをしっかりと把握し、それが使われる空間全体、いわば面をきちんと理解していなければ、豊かで快適、そして環境に優しい生活の在り方を提案することはできません。

では、真の意味でユーザーの期待に応え、理想を実現するには何が必要か──。鍵は、“感性”に訴えかけることだと私たちは考えています。例えば、蛇口やシャワーから出る水の出方や肌への当たり方など、普段意識することはないかもしれませんが、そこには無意識に心地よいと感じるものが存在します。そうした人と水との出会いのあらゆる側面をデザインすることが私たちの役割です。湯船に注がれる水が水面を打つ音にまでこだわって、ものづくりを行っています。

加えてSANEIでは現在、使われる場所に調和した商品ということを強く意識しています。どんな空間にもマッチする最大公約数的な商品を届けるのではなく、例えば優雅な邸宅とカジュアルな住まいではふさわしい水栓や洗面用品が異なりますから、それぞれに適したものを提案していく。実際最近は、そうした取り組みが支持され、ラグジュアリーホテルなどが、特別スイートルームなどに当社の商品を選ぶ事例も出てきています。

人と地球に寄り添いこの星の奇跡を後世に

当社の理念「人類ある限り水は必要である」のとおり、水は暮らしに欠かせません。飲料としてはもちろん、朝起きれば顔を洗い、一日の疲れを洗い流すためお風呂にも入る。そうした水との触れ合いが日々の確かな活力、また癒やしとなることが私たちの願いです。当社はこれまで日本初の商品を製造・販売するなど、挑戦することを大事にしてきました。ただ、それはあくまで手段。目的は、人に寄り添う商品を生み出し、皆さまに満足していただくことに他なりません。

加えて現在、持続可能な社会を支えていくことは企業にとって当然の責務です。当社もこれまで環境配慮型の商品や再生可能な天然素材を活用した商品、雨水や中水をため込んで非常時に活用するシステムなどを展開してきました。また最近は、屋内に病原菌やウイルスが入り込むのを抑える住空間の提案も行っています。

水と生命があふれる地球は、奇跡の星といわれます。その中で壮大な水の循環の一端を担う立場として、奇跡をより良い形で後世に引き継ぐことに貢献したい。海外にも商品を展開する企業として、24時間365日、世界のどこかで当社の商品が使われ、豊かな暮らし、サステナブルな地球を支えられれば、これほどうれしいことはありません。その実現のためにも、コンセプトである「Think Life. Make Act. 行動しよう。未来のために。」を胸に、今後も真摯しんしに事業活動に取り組んでいきます。