新規取引を始める際、一番の問題は与信と債権回収リスクといえるだろう。これらを一括で任せることができ、請求書業務や入金催促までしてくれるサービスがあると聞けば、営業や経理担当者なら思わず身を乗り出してしまうのではないだろうか。企業間決済サービス「NP掛け払い」のメリットを探った。

超速の与信審査で債権回収のリスクなし

ネットプロテクションズは、国内BNPL(後払い)決済サービスのパイオニアにして、BtoC向けの国内BNPL決済サービス市場で40%以上のシェアを誇るリーディングカンパニーだ。近年はBtoB向けサービスも展開し、躍進著しい。

今、企業の間には、ポストコロナの時代を見据え、積極営業に打って出る動きが増しているようだ。もちろん既存顧客ばかりでは売上の大きな伸びは期待できない。やはり新しい取引先の開拓が不可欠である。そこで問題となるのが、新規取引にかかる与信審査と債権回収リスクだろう。与信を厳しくすれば新しい取引先の獲得は難しくなるし、といって与信を緩めれば後に債権未回収という事態を招くリスクが増してしまう。

誰かが与信に責任を持ってくれ、100%債権回収してくれればいいのだが……そんな都合のよい話が、実は、ある。ネットプロテクションズの「NP掛け払い」がそれだ。

同社、BtoBセールスグループの揚田大地氏は次のように説明する。

「企業名、住所、電話番号の3つの情報があれば、与信審査が平均して翌日には下ります。早ければ当日、遅くとも3営業日目です。お取引先への返答を先延ばしすることがないので販売チャンスを逃しません。与信通過率99%です。また、売掛金すべてを当社が立て替え払いしますので、未回収のリスクはありません」

NP掛け払いは、与信から請求書発行、代金回収、入金管理、入金催促、未回収保証まで丸ごと請け負うサービスなのだ。営業から見れば、社内与信で通るか分からない取引先を新たに獲得できるし、経理にとっては煩雑な請求書発行の事務作業が不要になる。つまり、営業も経理も、それ以外の業務に集中できる環境を作り出すことができるのである。NP掛け払いサービスは、現在、約2500の事業所・店舗が利用しているという。

債権の保証範囲が秀逸

利点を書き並べたところで、実際に利用している企業の声を聞いてみよう。

2020年1月からサービスの利用を始めた渡辺パイプは、水と住まい、農業を事業領域とする。工事事業者や工務店等に対し、いわば“購買代理業”として、上下水道工事や住宅の給排水に必要な配管類や住宅建設のための資材、設備などのメーカー製品を供給している企業である。加えて農業用ビニールハウスのメーカーの顔も持つ。現在、全国に550カ所もの営業所を展開している。

同社はどうしてNP掛け払いを利用することになったのか。営業推進統括部部長・渡邉圭吾氏は、導入時の課題について次のように語る。

「一般的な与信管理サービスでは、申請事項が非常に細かく多岐にわたり、相当な手間が取られてしまいます。さらに審査にも時間がかかり、販売ロスにつながりかねない。審査が通ればまだしも、通らない場合は営業担当者に徒労感だけが残ります」

そこで新規獲得をしやすくするためのサービスを探し、ネットプロテクションズを含む数社を検討したという。では、「NP掛け払い」採用の決定打は何だったのか。

「与信審査の速さと申請の簡便性ですね。本当にこれでいいの? というくらい申請が簡単なんです。そして債権の保証範囲。重要だったのは納品した当月分だけでなく、受注済み分を確実に保証してもらえるかです。お客様に発注頂いた商品の中には納期のかかる受注生産品もあります。だから当月納品分だけでの保証では不十分なんです」と渡邉氏。

NP掛け払いでは、当月中に受注している分であれば債権保証の対象となる。そこを大きな利点と受け止めた。

NP掛け払いのメリットについて話す渡辺パイプの営業推進統括部部長・渡邉圭吾氏。与信の申請が簡単なので現場からも好評という。社内での利用額も順調に増え、新規顧客の開拓にも一役買っていると話す。

新年度はNP掛け払いの利用額を150%に

実際、導入してみてどうだったのだろう。実は最初の3カ月間はほとんど使われなかったという。あくまでNP掛け払いを利用するかは現場の判断に委ねており、基本的には社内の与信管理を経て口座を開設するからだ。ところが6月を境に、急速に活用が増えたという。

「というのもサービス開始当初3カ月間は、NP掛け払いサービスの利用メリットを、如何に社内へ周知させるかに重きを置いていました。全国の拠点へオンライン研修を繰り返し実施した事で少しずつ浸透し、そこに弊社の新規開拓重点期間が相まって、一気に利用促進に繋がったと考えています。ただ、利用勝手が悪いサービスは拡がりません。その点NP掛け払いは簡易な申請のみで、信用調査会社のデータも固定資産の確認も不要です。そのうえ回答が早いので迅速な口座開設が可能になりました」と渡邉氏。

管理画面の参考例。シンプルな画面構成に必要な要素がまとまっており、与信審査中案件から請求書発行案件まで、一気通貫で状況を把握できる。

新規開拓時にNP掛け払いを選択するケースが増え、その利用率は現在、新規口座開設全体の10%にまで上がってきた。また、利用して意外と良かった点が他にもあるようだ。

「まず、管理画面の使いやすさです。債権の推移や支払い状況、与信額が手に取るように分かります。そしてサポートのよさ。分からないことがあればNP掛け払いのサポートデスクに電話するとすぐに丁寧な回答がもらえます」と話す。

22年度のNP掛け払い利用額は、前年度に比べ150%伸長を見込んでいるという。渡邉氏の満足度はかなり高そうだ。ただし、ただお任せするだけでは十分ではない。

「本サービスで、債権譲渡をすれば終わりではなく、お客様とより深く継続したお取引を目指しています。各データをネットプロテクションズさんと共有しながら、お客様の物件受注にも柔軟に対応できるよう、常に現場の営業や社内審査部門とも連携を図っています。そしてその仕組みをしっかり構築、運用する事が重要だと考えています」と話す。

実際、NP掛け払い利用の運用フローを何度も見直し、特に営業の利便性を向上させるよう努力を続けているという。

ネットプロテクションズ BtoBサービスグループの揚田大地氏。BtoBカスタマーサービスグループも兼任し、取引先との仲介役としてサービスのブラッシュアップに努める。NP掛け払い導入後のアフターフォローを重視していると話す。

NP掛け払いで翌日審査が下りる秘密

ところで一番の不思議は、与信審査のスピード感ではないだろうか? 平均で翌日、速ければ当日の判断はあまりに速すぎるのではないか。それに法人名、住所、電話番号だけ渡せばよいとは、本当にそれで大丈夫なのか。ネットプロテクションの揚田氏から返ってきたのは意外な答えだった。

「答えはシンプルで、過去に『未払い』『支払いの滞り』『詐欺』があったところ以外は審査を通してしまいます。それで通らないケースが全体の1%程度ですね」とのこと。

まさに発想の転換だ。与信は「未払いが起きないか」「支払いの遅延が起きないか」を心配するあまり、相手の売上・利益から固定資産、さらには社長の人柄まで事細かに調べて通すか否かを決めるものと思い込んでいた。これまで債権の“事故”を起こしていない先をすべて通せば、確かに速い。

もちろんネットプロテクションズには保証のリスクが生じる。「単月の与信枠を企業規模に応じて30~300万円と設定し、債権回収に問題がなければ徐々に枠が増えていく設計なので無茶しているわけではありません。それにNP掛け払いは、個人のお客様相手の後払い決済サービスで培ったノウハウが生かされており、事故率を低く抑えています」と揚田氏。

このような保証リスクの軽減は利用企業にもメリットがある。NP掛け払いでは、債権回収が順調であり、任される債権の額が増えるにつれ、手数料が下がる仕組みになっているからだ。

そしてまた、NP掛け払いを通じて取引を開始する相手方にも旨味がある。個人事業主や開業間もない企業の場合、信用情報が十分でないケースが多い。しかし相手企業がNP掛け払いを利用していれば、取引が始められる可能性が高まるからだ。

このようにNP掛け払いは企業と企業の間を取り持ち、取引開始のハードルを低くする決済だ。それだけに、このサービスは「お客様も、お客様のお客様も同じように大切にする気持ちが大切」と揚田氏は強調する。「カスタマーサービスの担当者はしっかりと研修を受け、話し方一つとっても非常に丁寧な口調で対応するよう心がけています」と続けた。

債権という企業にとって重要なものを扱うだけに、システムだけでなく、人とソフトの部分にも心を砕くサービスなのだ。

前出の渡邉氏も「このサービスに出会えて本当によかった」と振り返る。「売上は『単価』×『顧客数』×『生産性』で成り立っています。今の時代、単価は上げるのは難しいから顧客数を増やすしかありません。顧客数が増えれば営業や経理の負荷が大きくなりがちです。でもNP掛け払いに任せれば生産性も上がります」と。

それを受け、揚田氏は言う。「NP掛け払いは、業務負荷を増やさず、売上を増やすサービスです」。もちろんNP掛け払いを利用するには手数料が必要なので、それを加味して自社に得になるかどうかを決める必要はあるが、営業のスピード感を高めたい、経理の業務を効率化したい企業にとっては、十分に検討してよいサービスといえるはずだ。