人々の心を動かすメッセージが込められている
──応募作品についてどのような印象をお持ちですか。
【大嶋】コロナ禍によって「以前なら当たり前にできていたことができない」というもどかしさ。また、「いつこの状況が終わるのだろう?」という先の見えない不安。重苦しい空気が世の中を覆う中にあっても、「環境フォト・コンテスト」に寄せられる作品から感じられるのは、「人・社会・自然の共存によって地球のバランスを維持することが、明るい未来をつくる」。そんな、力強く人々を勇気づけ、心を動かす数々のメッセージです。
当社としても毎年のコンテストを楽しみにしていますし、「共存」の素晴らしさや重要性を私たち自身にも再認識させてくれる機会と捉えています。そして、このような状況だからこそ、応募者の皆さんが写真に込めたメッセージが、より広がっていくことに期待しています。きっと、それがさらなる人と人との「共存」や、すぐれた知恵の共有にもつながるでしょう。
──「環境フォト・コンテスト2021」の優秀賞についてお聞かせください。
【大嶋】自然界であっても人間界であっても、他者との関わりがなければ存在できません。優秀賞「信頼」の男性の満面の笑み、その肩でいかにもリラックスしているように見える鶏の姿に、「互いの存在にまったくストレスを感じない豊かな世界」を感じ取ることができます。おそらく、一緒に歩んできた時間、それによって築かれた深い関係性があればこそ、撮ることができた作品なのだと思います。
──佳作2点についてはいかがですか。
【大嶋】今や、ホタルの姿を見られる場所は限られています。佳作1の「上陸開始」ではたくさんのホタルによる鮮やかな光、暗闇のコントラストが美しいですね。ただそれだけでなく、背景にある「人間による自然への配慮や努力」も含めた「共存」がうまく表現されているのかなと思います。佳作2の「お坊さんも神だのみ」は、ここ日本では仏教も神道も身近な場所にあるという様子を、奥行きのある写真として捉えている点が目を引きます。当社が目指している「共存社会」のイメージとも重なり選出しました。
「JTグループ環境計画2030」に基づいて着々と推進
──近年の状況についてどのようなことを感じていますか。
【大嶋】当社では環境活動を経営における重要課題の一つと位置付け、SDGsが注目される以前から、「当社を取り巻くあらゆる存在と共に持続可能性を探る」という思想を受け継いできました。ウミガメの鼻にストローが刺さった動画などをきっかけにプラスチックごみに対する関心が一気に高まるなど、特にここ数年の状況は劇的に変化しています。当社の従業員においても、例えばレジ袋有料化の際にも社内SNSで活発な意見交換がなされるなど、一人一人の意識も高まるばかりです。
では、当社が具体的に環境負荷をどう低減していくのか、持続可能な事業環境をどうやって確立するのか、その考え方を示したのが、2019年5月に公表した「JTグループ環境計画2030」です。重点的な取り組み領域として挙げているのは次の3つ。「エネルギー・温室効果ガス」「自然資源」「廃棄物」です。
当社の事業と、自然資源の持続的な活用の両立について考えるとき、「水リスク」を忘れてはなりません。日本では豪雨による洪水被害や台風がありますし、海外では干ばつ、水不足の地域などもあります。当社の国内外のすべての製造拠点において、水資源へのアクセス、水質、規制、洪水や干ばつなどの自然災害、将来予想され得る水ストレス状況など、綿密な調査を欠かしません。また、持続可能な森林資源や木材資源の活用をテーマに、直接契約葉たばこ農家が葉たばこの乾燥工程で使用する自然林由来の木材すべてを、再生可能な燃料源に転換。温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。また、マラウイとザンビアの葉たばこ農家では「ライブ・バーン」の設置を進めています。樹木を乾燥施設として使用する取り組みで、木材の消費量を減らし、かつ設備維持の労力やコストも低減することができます。
──そうした企業の取り組みを、多くの市民に知ってもらうことも大切ですね。
【大嶋】視覚に直接的に訴える「写真」は、ときに文章で説明するよりも多くの情報を伝えることができるのではないでしょうか。「環境フォト・コンテスト」への参加などを通じて、JTとはどのような企業なのか、どんな活動をしているのかを、もっと深く理解していただけるよう努めたいと思います。