事業そのものが自然環境と密接に結びついている王子ホールディングス。「環境フォト・コンテスト」は、自社の想いを市民と共有できる貴重な場だ。同社コーポレートガバナンス本部広報IR室の二人に話を聞いた。

経営理念を見事に写し出した作品に感動を覚える

コーポレートガバナンス本部
広報IR室 室長
池田 和さん

──「環境フォト・コンテスト」に長年参加されています。

【広報IR室】当社グループは、国内外に58万ヘクタールもの広大な社有林を保有しており、日本の民間企業では最大です。植林当時の目的は製紙原料の安定確保でしたが、時代の変化に伴い、森林は持続可能な資源として見直され、その利活用に対してさまざまな分野から注目されています。さらに近年は「資源」としてはもちろん、国土や生活環境の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、そして二酸化炭素の吸収など、森林が持つ「機能」にも、多くの期待が寄せられています。

私たちは経営理念の一つである「環境・社会との共生」に基づき、持続可能な社会の実現を目指しています。事業そのものが自然環境と密接に結びついている私たちにとって、次世代に美しい自然と資源を残すことは基本的なテーマです。「環境フォト・コンテスト」は、そんな私たちの想いを皆さんと共有できる貴重な場であると考えています。毎年多くのご応募をいただいており、どの写真も心温まる美しい写真ばかりで驚かされます。また、募集要項で言及していない当社の経営理念を見事に写し出している作品も多く、感動を覚えることも少なくありません。

──「環境フォト・コンテスト2021」優秀賞の感想は。

【広報IR室】優秀賞「森の中のほほえみ」は、切り株があじさいやキノコなどの森の恵みを喜んでいるかのよう。ファンタジーあふれる世界観が素晴らしい作品です。森で育まれるさまざまな生命の活動は喜びに満ちていて、これからも絶えることなく続いていく──。そんなことを想起させてくれます。「森そのもの」で明るく表現している点が優秀賞選出の決め手になりました。

2021年優秀賞「森の中のほほえみ」丸山潔髙さん
2021佳作「人馬一体」有田 勉さん
2021年佳作「森の恵み」木野重利さん

※「環境フォト・コンテスト2021」の募集テーマは「森と生きる、森と歩む」

今の時代、森に求められる役割は多様化している

──これからの地球にとって、「森」の存在はますます重要です。

【広報IR室】「2021」コンテストまでの当社の募集テーマは「森と生きる、森と歩む」。動植物や昆虫など無数の命が宿る森は、人類にとってもさまざまな資源を生み出してくれる貴重な存在です。そんな森でのワンシーンを写し出した作品を多数ご応募いただきました。繰り返しになりますが、時代の変化に伴い、森が果たす役割はより多様化しています。気候変動問題のカギを握るCO2の吸収、土砂崩れなどの災害予防面、そして生物多様性など、森は多くの社会課題を解決する力を秘めています。森を生かし続けることで、次世代を生きる子どもたちが笑顔で暮らせるようにという思いを込めて、「2022」コンテストでは「森の力で未来を変える」というテーマで募集しました。

──環境への取り組みをいかに推進しているのでしょうか。

【広報IR室】「革新的価値の創造」「未来と世界への貢献」「環境・社会との共生」を経営理念に揚げ、「森のリサイクル」「水のリサイクル」「紙のリサイクル」といったバリュー・チェーンを通じた資源循環(サーキュラーエコノミー)を推進し、持続可能な社会に貢献できるように取り組んでいます。また、2020年9月には、2050年のネット・ゼロ・カーボンを中核とする「環境ビジョン2050」と、そのマイルストーンとなる「環境行動目標2030」を新たに制定しました。

コーポレートガバナンス本部
広報IR室 グループマネージャー
鈴木 貴さん

──「森のリサイクル」「水のリサイクル」のことを教えてください。

【広報IR室】当社グループが保有する「王子の森」の面積は、国内外を合わせて約58万haに及びます。この森で吸収するCO2は年間950万トン。これまでのCO2蓄積量は約1億2900万トンにもなります。私たちは「木を使うものは木を植える義務がある」という考えのもと、植林を行い、木を育て収穫し、また木を植えることを繰り返しながら、持続可能な森林経営「森のリサイクル」を実践してきました。

また、製紙事業では多くの水を使用しますので、当社はこの使用した水を可能な限りさまざまな工程に循環利用することにより、取水量を削減しています。当社グループの2020年度の水のリサイクル率は93%を達成。また、この水のリサイクルで培った技術やノウハウをベースに水処理システムを構築し、国内外のお客様に提供しています。

加えて、紙のリサイクルにも継続して取り組んでおり、2020年度の古紙利用率は68.5%。日本製紙連合会の古紙利用率目標「2020年度までに65%」を達成しています。今後もさらなる利用率アップを目指し、機密書類や難処理古紙の利用拡大、品質向上のため、業界との連携を強化していきます。

王子ホールディングス(株)美瑛社有林

──今後、企画してみたいことなどはありますか。

【広報IR室】例えば当社の社有林の一部を写真愛好家の方々に開放し、そこで撮影いただくような機会を設けられないかと以前から考えています。もし実現できた場合は、「環境フォト・コンテスト」の応募者にもぜひ参加してほしいですね。

当社グループは、製紙事業で培ってきた技術やノウハウを新たな分野に積極投入するとともに、従業員一人一人が環境に対する意識を高く持って社会の期待に応えられる活動を国内外に展開していきたいと思います。