顔料や着色剤、印刷インキ、機能性樹脂などを展開する大日精化工業。第1回「環境フォト・コンテスト」から継続している募集テーマ「環境色彩」に対する理解の深まり、作品のクリエイティビティの進化を実感しているという。

日常にさりげなく溶け込む色彩にスポットを

──第1回コンテストから協賛を続ける中で、変化を感じる点はありますか。

【広報本部】地域固有の自然や歴史、文化などを背景に、人々の営みや記憶、その場所に寄せる想いなどが重なり合って「景観」は形成されます。有名な景勝地ばかりでなく、日常にさりげなく溶け込んでいる色彩の美しさや楽しさを再認識し、色のある世界の豊かさを応募者や読者の皆さんと共有したい。それが、当社が「環境フォト・コンテスト」への参加を続けている理由です。当初は募集テーマである「環境色彩」という言葉に対して、あまりなじみがないという方も多かったのではないでしょうか。それも回を重ねるにつれて、応募者をはじめ多くの方に言葉の意味をご理解いただき、より創造的な解釈が加えられた写真表現へと発展していると感じます。

さまざまな受け止め方がなされる「環境」。当社の募集テーマ「環境色彩」が示す「環境」とは、家庭・社会・自然なども含み、いわゆる絵はがきのような美しい風景に限りません。その場所、その時間ならではの一期一会、新鮮な驚きや感動──。多様な視点から「環境の意味」を捉えた数多くの力作を前にして、毎年、新たな発見と喜びをかみしめながら審査に当たっています。

──「環境フォト・コンテスト2021」の審査で心がけたことはありますか。

【広報本部】従来の選定基準に加えて、コロナ禍や東京オリンピック・パラリンピック開催といった社会性を意識して応募作品と向き合いました。特に、コロナ禍によって失われた人と人とのふれあいや、地域の中で継承されてきた季節行事など、「私たちが忘れたくない彩りの風景」を写し出した作品に焦点を当てました。優秀賞受賞作品「楽しい時間」で描かれたワンシーンは、町の一大イベント・小学校の運動会での待ちに待ったお弁当の時間。みんなが集まり、シートの上で思い思いに食べ物に手を伸ばす様子は、コロナ禍でイベントの開催が制限される中、すっかり愛おしい風景となってしまいました。

文字や数値による情報とは異なり、写真という表現方法はメッセージをより直感的に伝えることができる点に優れていると思います。そして、写真から伝わる「意味」は一つではなく、より複合的で、人それぞれに自由な解釈ができる豊かな広がりがあります。当社では、レポートなどを通じた環境やサスティナビリティに関する定量的な実績、目標の公表と合わせて、「環境フォト・コンテスト」で選定した作品を、環境に対する「私たちの想い」を伝える媒体として活用しています。

2021年優秀賞「楽しい時間」有田勉さん
2021年佳作「挑む」南秀行さん
2021年佳作「星祭り(七夕)」江本恭平さん

製品ライフサイクル全体の課題解決を目指す

──環境活動において、どのようなことを重視していますか。

【広報本部】環境やサスティナビリティなどへの取り組みを企業の義務として位置づけるCSRの視点に加え、より能動的なESGへのアプローチによる社会貢献が必要であると認識しています。地球規模での環境問題や社会環境が急速に変化する状況下で、私たち企業には脱炭素化、資源循環をはじめとする社会的課題の解決、自然災害やパンデミックに対するレジリエンスの強化など、機敏な対応が求められています。

CSR・ESGのマテリアリティ・マトリクス(重要課題)

そこで2021年4月、新たに「CSR・ESG推進本部」を設置しました。化学メーカーである当社にとって、ESGへの取り組みはグループを取り巻くサプライチェーン全般にわたる課題。原材料の調達段階から当社製品を使用した製品が廃棄される段階まで、ライフサイクル全体においてサスティナビリティを意識した事業活動を推進し、ステークホルダーの期待に応え信頼の維持に努めたいと思います。トップの高橋弘二をはじめ全従業員が一丸となって挑むとともに、技術主導による競争優位性の確保を経営戦略の一つに掲げ、環境貢献製品の開発や拡販などによって「持続的成長」「価値向上」を目指します。

オープン・イノベーション型の研究拠点として建設中の佐倉テクノロジー・イノベーションセンター

──「環境フォト・コンテスト」に期待することをお願いします。

【広報本部】コロナ禍の影響で私たちの生活は一変し、社会のすべてを元通りにすることは難しいのではないかとも指摘されています。特に、人と人とのコミュニケーションや移動を通した発見、出合いなどの面で、コロナ禍が残した傷は深い。私たちが築いた文化の縮退にもつながり得るものです。

その意味でも「環境フォト・コンテスト」には、私たちが忘れてはならない大切なものを思い起こさせてくれる、そして未来に継承する役割を期待しています。「環境」の重要性は、SDGsなどを通して社会共通の課題として急速に根付きつつあります。入賞作品がより多くの人の目に触れる機会を得ることで、多くの人の意識がさらに喚起され、高まるのではないでしょうか。